第445回

入試目前!志望校に合わせた進学資金の準備はお早めに

高校3年の息子の大学受験が迫っています。親は地元の国立大を推していたのですが、本人の強い希望で、遠方の私立大学も受験することになりました。私立理系で仕送りも必要となると、ローンを利用しないと乗り切れそうになく、心配です。(熊本県 S)
むやみに心配するよりも、具体的に情報を集めて進学資金計画を立てましょう。進学資金が足りなければ、奨学金やローンの情報も集め、家計と照らし合わせて試算しておけば、進学が決まってから慌てなくて済みます。

不況の中、資格系・技術系学部が人気。国立大志向、地元志向も強いが…

「少しでも就職に有利な分野を…」と、最近は国公立・私立を問わず資格系・技術系の学部の人気が高まっており、2012年の入試もその傾向は強いようです。また、厳しい経済環境から、国公立大志向、地元志向も強まっているようです。私立の場合、理系学部や医歯・看護系などは専門の設備が必要で実習も多く、文系学部よりも学費が高くなりますから、学部による学費に差がない国立大志向は一層強くなるのでしょう。 (→表1)。

<表1:大学の初年度納入金> (単位:円)
  授業料 入学料 施設設備費 合計
国立大学(昼間部)
535,800
282,000
-
817,800



文科系学部
736,938
256,378
158,662
1,151,978
理科系学部
1,037,190
272,203
190,416
1,499,808
医歯系学部
2,968,656
1,009,619
1,002,536
4,980,811
その他
934,559
278,279
249,858
1,462,696

文部科学省調べ
国立大学は文部科学省令による平成22年の標準額。私立大学は昼間部の平均額(文部科学省「平成21年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査」)

一方、Sさんの息子さんのように、特定の大学や学部・学科への進学を強く希望される場合もありますよね。お子様が小さいころから教育資金を準備されるご家庭は多いのですが、なかなか、「私立理系・仕送りあり」を想定して資金を準備されることは少ないので、Sさんのように、お子様の強い希望にたじろぐ親御さんも多いかもしれません。しかし、入試も目前に迫るこの時期、戸惑っている時間的余裕はありません。お子様のやる気を応援すると決めたなら、具体的に進学資金の準備に動き出しましょう。

また、当然ながら、備えるべき進学資金は、第一志望の大学のものだけではありません。入試は時の運もありますから、受験するすべての大学に進学する可能性があるわけです。進学資金計画は、第一志望の大学だけでなく、受験するすべての大学それぞれで立てておく必要があります。

志望大学ごとに、学費・生活費を洗い出して

国立大学の場合、学費はほぼ一律ですが、私立大学の場合は、大学・学部・学科ごとに学費は異なります。まずは、各大学の入試資料やHPなどから学費の情報を集めましょう。大学・学部によっては、学年ごとに必要な学費が異なる場合もあります。4年間、いつ、どれくらい必要になるのか、なるべく具体的な情報を集めましょう。

【参考リンク】

進学後の学生生活にかかる費用の計画も立てておく必要があります。親元から通う場合でも、大学の場所によっては、通学に時間もお金もかかります。親元を離れる場合でも、首都圏の大学への進学と、地方の大学への進学では必要な住居費や生活費も違ってくるでしょう(→表2)。交通の不便な場所に大学があれば、バイクや車での通学も考慮しなければなりません。HPなどに掲載されている在学生の経験談なども参考に、具体的な学生生活を思い描き、費用を見積もっておきましょう。

<表2:居住形態別・地域別学生生活費の内訳(大学・昼間部)> (単位:円)
区分 自宅 学寮 下宿・アパート、その他
国立 公立 私立 国立 公立 私立 国立 公立 私立
東京圏
1,124,400
1,126,100
1,772,100
1,278,700
-
2,003,700
1,970,500
1,823,000
2,532,400
京阪神
1,115,000
1,081,000
1,779,100
1,144,900
1,481,400
1,918,200
1,919,000
1,763,600
2,321,800
その他
1,031,100
1,076,700
1,642,700
1,190,400
1,248,000
2,104,600
1,665,100
1,667,000
2,275,000

日本学生支援機構「平成20年度学生生活調査」より抜粋
学生生活費は、学費(授業料、その他の学校納付金、修学費、課外活動費、通学費の合計)と生活費(食費、住居・光熱費、保健衛生費、娯楽・し好費、その他の日常費)の合計
「東京圏」とは、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県、「京阪神」とは、京都府・大阪府・兵庫県をいう。

奨学金や教育ローンの情報も集めておいて

志望大学ごとに必要な資金の情報を集めた結果、資金が不足しそうということになったら、その対策も立てておきます。奨学金制度では、日本学生支援機構のものが有名ですが、大学独自の奨学金制度がある場合もありますし、自治体や企業などにも奨学金制度があります。利用できるものがないかもチェックしておきましょう。

教育ローンには、日本政策金融公庫による「国の教育ローン」や銀行や信用金庫など民間金融機関による教育ローンがあり、現在は、国の教育ローンは固定金利で年2.55%(11月10日現在・保証料別)、民間金融機関の教育ローンでは、変動金利で年2.00%(保証料込)程度からと、低金利で利用しやすい状況にあります。月々いくらなら無理なく返済できるのか、家計を整理した上で、借入金額や毎月返済額を試算し、家計に無理のない返済額や返済方法をまず検討してみてはいかがでしょうか。

<表3:毎月のローン返済額の例>
金利(年率) 毎月返済額 返済総額
2.00% 35,056円 2,103,331円
2.50% 35,495円 2,129,683円
3.00% 35,937円 2,156,243円

イー・ローン ローンシミュレーションにて試算

その上で、ご家庭の都合に合わせて、ローンを選びます。教育ローンには、入学金や授業料に限らず、下宿費用や教材費等にも使えるものなどタイプもさまざま。また、在学中は返済を据え置くことができるものもあります(ただし、返済を据え置いた場合は、総返済額は多くなります)。

進学資金のめどを早めにつけて、受験に臨むお子様を落ち着いて応援できる体制を整えておきたいですね。

私が書きました

大林 香世 の写真

大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2011年11月25日