第422回

事業資金を用途に合わせてタイミングよく借りるヒントは?

震災後の景気の先行きが見えないなか、今年の夏以降、復旧・復興需要を見込んで、会社の運転資金や設備投資資金を確保したいと考えていますが、ヒントがあれば教えてください。 (Hさん 48歳 中小企業経営)
経営を取り巻く環境変化に細心の注意を払いつつ、公的な支援の枠組みやビジネスローン、不動産担保ローンなどを吟味し、機動的な資金調達を図ってはいかがでしょうか?

電力不足の中でも、景気には明るい兆しが見えてきている!

帝国データバンクの「夏季の企業活動に関する意識調査」によると、7割超の企業が、今年の夏は電力不足によって供給力が落ちることを懸念しているという結果が出ています。需要面よりも供給面の縮小を大きくとらえている企業が多いことは、需要が供給を上回ってデフレを弱める要因にもなります。今後、電力不足をキッカケとした新しい商品やサービスの開発、また、サプライチェーン(供給網)や物流など、震災によって低下した企業活動が回復すれば、復旧・復興需要を取り込んで、東北や関東地方にとどまらず、全国的に景気が上向いていくことが考えられます。

日本銀行も6月13日、14日の金融政策決定会合では、景気の現状を「生産面を中心に下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられている」と、景気判断を一歩前進させました。

公的な支援の枠組みを活用することも考える!

金融庁の指導のもと、被災した企業の方たちからのつなぎ資金供与の申し込みに対して、金融機関はできる限りこれに応じるよう努めることになっており、また、融資の申し込みに対しても、被災者の実情に配慮し、融資審査の提出書類等を必要最低限にするなど、弾力的、迅速な対応が図られています。

また、日本銀行は、わが国の経済がデフレから脱却して成長基盤を確かなものにするため、資本性資金の供給や、動産・債権担保融資など、従来型の不動産担保や人的保証に依存しない融資を対象に、金融機関への5千億円の低利の貸付枠を設定することに決めました。

このような公的な支援の仕組みによる融資をうまく活用することも、運転資金や設備投資資金を調達する有力な選択肢のひとつです。

無担保ビジネスローンや不動産担保ローンで機動的に資金を調達する!

銀行や公的機関の融資では、手続きや審査に長い時間がかかったり、思い通りに交渉が進まないケースがあるかもしれません。

そんなときは、ビジネスローンからの借り入れを検討してみてはいかがでしょう。

  無担保ビジネスローン 不動産担保ローン
融資限度額
少額
(300万円、500万円、1,000万円など)
多額
(5,000万円、1億円、2億円、10億円など)
金利
高い
低い
最長返済期間
短い(3年、5年、7年など)
長い(20年、25年、30年など)
担保
不要
必要
主な用途
運転資金
運転資金、設備投資資金

ビジネスローンには、無担保のものと有担保のものとがあります。

無担保のビジネスローンは、審査期間が即日~1日程度と短く、また、来店する必要がない場合が多いため手軽ですが、融資限度額が小さく金利が高く返済期間が短いのが特徴。したがって、短期に返済が可能な運転資金の融資に向いているといえます。

【参考リンク】

いっぽう、有担保ビジネスローンの代表格である不動産担保ローンは、審査期間は1日から4日程度とやや長めで、手続きに来店が必要なケースが多いですが、融資限度額が大きく金利も低め。返済期間を長く設定することも可能です。よって、不動産担保ローンは、運転資金のみならず設備投資資金の融資にも向いています。

【参考リンク】

※金融機関によって、担保にできる物件所在地が異なりますので、よく確認してから申込をしましょう。

融資を受ける際には、短期~中長期の事業の動向を予測し、返済プランをしっかり練った上で、用途に合った「資金」をタイミングよく借りるようにしてください。「ローン比較リスト」の活用も忘れずに!リストの使い方は私が前回書いた記事を参照してください。

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2011年06月17日