第411回
リスクに備えて保険とローンを見直す
- 3月に起こった震災の被害状況を見るにつけ、リスクに備えておくことの重要性を意識せずにいられません。どんなアクシデントが起こるのかわからないからこそ、それらを想定し、できるだけの準備が必要なのだと思います。そこで、そのための準備についてアドバイスをお願いします。(Wさん 43歳 会社員)
- 震災だけに限らず、アクシデントはいつ起こるのかわからないので、それに備えておくことは大切です。金融機関や保険会社、国や地方自治体がさまざまな支援策を出していますので、どのような対策があるのか理解し、万が一のときに対応できるように準備しておきましょう。
ヒトへのアクシデントに備える保険
最も大切なのは、「人」へのアクシデントに備えることです。ケガや病気の治療費や、生活が傾かないように生活費や収入の補てんが必要になってくるでしょう。それらに対応するのが生命保険や医療保険です。ただし、どちらも社会保障としての補てんがありますので、まずはそれらを把握しましょう。
たとえば死亡保障に関しては、高校生までの子どもがいる女性であれば、公的年金から年間100万円以上の社会保障が確保されています。ただし、子どもがいても男性には同様の保障がありません。男性と女性の社会保障に違いがある点を理解しておきましょう。
また、1カ月に一定以上の医療費がかかったときには、その分の医療費が「高額療養費制度」によって戻ってきます。これは健康保険制度に加入していれば誰でも利用できる制度です。
これらの社会保障を理解し、それでも不足する部分を民間の保険でしっかり補うようにしましょう。
今回の震災で、民間の保険会社は保険料の免除や保険金の迅速な支払いなどの対策が取られています。保険の見直しとともに、どういった対策が取れているのかも確認しておいてください。
【参考リンク】
保険の窓口インズウェブ
モノへのアクシデントに備える保険
ヒトの次に大切なのがモノ、マイホームや生活用品などです。では、地震が起きた場合、生活再建にどれくらいのお金がかかるのか、内閣府の資料を元に目安をご紹介しましょう(内閣府「平成20年度被災者生活再建支援法調査」より)。
資料によると住宅再建のためにかかった費用(「住宅の建設、購入費」や「住宅の解体・撤去・整地」のほか、「住宅の家賃」や「借地の地代」など)が2,000万円以上の人は50%で、1,000~2,000万円未満が20%以上と続きます。
また、住宅再建以外にかかった費用(「家電製品や冷暖房器具、家具などの購入、修理」や「食料・日用雑貨の購入」など)は、201万円以上が22.8%と最も多く、101~200万円が21.5%、51~100万円が21.2%と続きます。
こういった費用を補てんするために地震保険があります。ただし、地震保険は単独で契約することはできず、火災保険と併せて契約することになります。また、基本的に補償額は火災保険の30~50%の範囲内(ただし建物は5,000万円まで、家財は1,000万円まで)までしか設定できません。
【参考リンク】
火災保険一括見積もり窓口
地震保険は「生活を再建するための保険」だということを理解しておきましょう。地震保険の保険料は地域と構造によって決まっており、どこの保険会社で加入しても保険料は変わりません。
地域(都道府県) | イ構造(※1) | ロ構造(※2) |
---|---|---|
東京・神奈川・静岡 | 1,690円 | 3,130円 |
千葉・愛知・三重・和歌山 | 1,690円 | 3,060円 |
埼玉・大阪 | 1,050円 | 1,880円 |
徳島・高知 | 910円 | 2,150円 |
茨城・山梨・愛媛 | 910円 | 1,880円 |
香川 | 650円 | 1,560円 |
北海道・青森・宮城・新潟・長野・岐阜・滋賀・京都 奈良・兵庫・岡山・広島・大分・宮崎・沖縄 |
650円 | 1270円 |
岩手・秋田・山形・福島・栃木・群馬・富山・石川・福井 鳥取・島根・山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島 |
500円 | 1,000円 |
※1:主として鉄骨・コンクリート造りの建物(A・B構造または特・1・2級構造の場合)
※2:主として木造の建物(C・D構造または3・4級構造の場合)
(財務省の基準料率より筆者作成)
万が一のアクシデントのときにローンはこう対応する
最も大きなローンとして
住宅ローン
があります。団体信用生命保険に加入していれば、契約者が万が一死亡した場合などは、住宅ローンの返済が免除されます。しかし、契約者が無事でマイホームが倒壊した場合などは、原則として住宅ローンの返済は免除されません。そのため、住宅ローンを払いながら、新しい住宅の準備をしていくことになります。とはいえ、それは生活に大きな負担がかかります。そこで、金融機関では返済期間を延長したり、利息を据え置くなどの対応を検討してくれる可能性があります。
困ったときにはほかで借りてきて返済したり、返済が滞ったままにせず、借りている金融機関にまず相談することが大切です。
大規模な災害のときには、国や地方自治体の支援策があります。今回の震災に対しては、被災世帯に対して100万円の一時金が支給されるようです。
また、ヒトの保険のところでも書いた通り、公的年金や健康保険などの社会保障もあります。いざというときになってから調べるのは大変ですから、常日頃からそういった情報を収集しておくことが大切です。利用している金融機関や保険会社がどういった対応をしているのか、国や地方自治体の支援策にはどんなものがあるのかをぜひ調べておきましょう。