第362回

大学生の一人暮らしに予定以上の出費が。家計での対処方法は?

地方に住む専業主婦です。息子が今年から東京の大学に入学することになりました。受験に備えてずいぶん前から教育資金の準備をしてきたつもりですが、思った以上にお金がかかり、家計の予備費として蓄えていた貯蓄の一部を取り崩さざるを得なくなりました。今後の家計も心配です。どのように対処すればいいでしょうか?(山口県・MMさん)
お子さんが大学に入学して一人暮らしをはじめる年は、思った以上に出費がかさみ、不安な気持ちになるかもしれませんね。まずは、お子さんへの“仕送り”を含めて、これからやりくりがうまくできそうかどうか確認し、一時的にお金が足りないようであれば、教育ローンを検討してみてはいかがでしょうか?

1年後くらいまでの毎月の収支を確認してみる

家計の不安を解消する第一歩は、家計の現状を正しく把握した上で将来の計画を立ててみること。つまり、目に見える形にすることです。不安の原因が明らかになるだけでも、気持ちの負担が軽くなります。対策も立てやすくなります。

まずは、この先1年後くらいまでの毎月の収支をシミュレーションし、貯蓄残高がどう推移するかをみてみましょう。新しい支出には毎月“仕送り”が加わります。また、大学の後期の授業料を支払うための準備も必要ですね。

シミュレーションをするときのチェックポイントは、厳しい家計が恒常的に続きそうなのか、それとも一時的なのかという点。月々の収支がいつも赤字になりそうなときには、家計を根本的に見直して改善する必要があります。いっぽう、一時的な出費のためにやりくりが大変になる場合は、緊急避難的に“教育ローン”を活用する方法などがあります。

家計の根本的な見直しは、収入を増やすか、支出を減らすかのどちらか

家計を見直して改善するには、収入を増やすか、支出を減らすかしかありません。

景気が少し持ち直してきて、ご主人の収入に回復、上昇の兆しが出てきていればよいのですが、そうでないなら、世帯収入を増やすために“奥さんも働く”という選択肢を真剣に考えたほうがいいでしょう。年間収入100万円(月収約8万円)でも家計は大きく改善されます。

また、息子さんが入学した大学を通して奨学金を申し込む方法もあります。日本学生支援機構の奨学金制度には、無利息の第一種奨学金と有利子(3%が上限で在学中は無利息)の第二種奨学金があり、毎年春に募集しています。大学によっては希望者に説明会を開催しているところもあるようです。

<大学昼間部の奨学金受給状況(2008年度「日本学生支援機構」)単位:%>
  全体 家庭の年間収入(万円)
~400 400~500 500~600 600~700 700~800 800~900 900~1,000 1,000~
受給者
43.3
22.6
11.8
12.2
0.3
11.2
16.6
5.2
10.1

上の表をみると、日本学生支援機構で2008年度に奨学金を受給した大学生(昼間部)の割合が43.3%であったことがわかります。また、受給した大学生の家庭の年収別の割合も示しています。当然のことながら、奨学金はあとで返済する必要があります。しかし、子どもが在学している間の“仕送り”額を減らせる強力な手段のひとつです。

支出を減らすには、まずは家計の中の固定費をターゲットに。代表例が生命保険料です。大学に入学したお子さんだけについていうと、世帯主が万が一亡くなった場合の必要保障額は、卒業して自立するまでの数年間の授業料と仕送り代です。加入当時の保障額はもう必要ないはずです。こんなふうに考えて必要保障額全体を見直して減額すると、保険料を大幅にカットすることができるかもしれません。

教育ローンを検討する

一時的な出費に対応するには、民間の教育ローンを活用する方法があります。

ただ、ローンを借りる前は、確実に返済ができるかどうかをじっくり検討することが大切。教育ローンは一般的に、入学金・授業料・施設設備費などの学校納付金のほか、アパート・マンションの敷金・家賃などの住居に関わる費用、教科書・教材・パソコンなどの購入費用を借りることができるものですが、なかには、生活費などの仕送り代をも借りられるものがあります。

また、学校にすでに払い込んだ費用を、あとから借りられるローンもあります。これを使うと、予想外にかかった費用をとりあえず期日までにかき集めて支払った後に、借りたローンで穴埋めすることができます。その他、申し込み時にお店に出向く必要のない教育ローンもあります。

4月末までの申し込みに金利を優遇するキャンペーンを実施している金融機関もあるので、比較検討をしてみてはいかがでしょうか?

私が書きました

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2010年04月09日