第347回

緊急経済対策は朗報!?住宅は今が買い時?

12月上旬に発表された政府の緊急経済対策で、住宅の金利優遇や贈与税の措置など住宅購入の促進措置が拡充されると聞きました。まだしばらく厳しい経済状況が続きそうですが、やはり、住宅は今が買い時なのでしょうか?(会社員K.Y.さん(28歳))
住宅価格は下落傾向にあり、住宅ローン金利も低金利の状態が続いています。さらに、住宅ローン減税や住宅購入を促進する優遇政策など政府の後押しもあって、外部環境面では、住宅は今が買い時といえるでしょう。ただし、ご自身の内部環境とも合っていることが大切です。

住宅を取り巻く環境は?

住宅を取り巻く環境から買い時を判断するには、「金利」「住宅価格」「税制」などを総合的に検討することが大切です。まず、この3つの現状を見てみましょう。

<金利>

「金利」は、平成11年以降の数年間が最も低い水準でしたが、現在は、省エネ・耐震住宅など一定の条件を満たす場合や、キャンペーンなど金利引き下げの制度が充実しているため、実質的な適用金利は、以前よりさらに低い水準といえます。

<住宅価格>

「住宅価格」は、平成18年以降上昇傾向にあったものの、昨年後半から下落傾向に。売れ残り物件であれば、底値といわれた平成12年前後よりも安いくらいで、新規物件もそろそろ底値が見えてきそうな気配です。
しかも、市場は、お買い得な中古物件やアウトレット物件は買われているものの、長引く不景気で、買い手優位の環境にあります。

<税制>

「税制」は、平成21年度から、住宅ローン減税に長期優良住宅が加わって、10年間で最高600万円の減税が受けられます。これは、過去最高だった平成11年(~2年半)の587.5万円を上回る減税額です。

緊急経済対策も追い風に

その上、12月8日に決定された政府の「明日の安心と成長のための緊急経済対策」によると、優良住宅取得支援(フラット35S)の金利の大幅な時限的引き下げ(平成22年12月末まで)や、平成22年度税制改正において、住宅投資の促進ための贈与税の措置、住宅版エコポイント制度の創設などが盛り込まれ、住宅の購入を検討している人にとっては、追い風になるともいえそうです。

では、住宅は今が買い時か?

しかし、これらの外部環境が良くても、景気は依然として厳しく、当面この状況は続きそうな気配。あまり考えたくはないですが、さらに収入が減ってしまうなんてこともないとは言えません。そんな中で、今が買い時とばかりに、家計の状況や「結婚」「出産」「転勤」というような将来おこるであろう「ライフイベント」を考えずに住宅ローンを組んでしまうと大変なことになります。

例えば、住宅ローン金利は、実質的に過去最低水準にありますが、裏を返せば今後は金利が上がる可能性が高いことを意味しています。そんな時期に金利が低いからといって、家計を省みずに毎月ギリギリの金額を返済する計画を立て、変動金利型や固定期間の短い固定期間選択型の住宅ローンを安易に選んでしまうと、金利が上昇した場合は将来の返済負担が増加します。

また、住宅ローン控除にしても、支払った所得税等以上には還付されませんし、確実にローンを返済してこそ恩恵が享受できるものですから、焦って自己資金などが十分でないまま購入を急ぐのはあまりおすすめできません。

さらに、医療費やお子様の教育費など、個々の家庭で必要となる出費も考えていかないと、将来家計が破たんしてしまうなんてこともあり得ます。

外部環境と内部環境のバランスがとれた時が本当の買い時

では、結局いつが買い時なのでしょうか。それは、みなさん一人ひとりタイミングが異なるものだと思います。「金利」「住宅価格」「税制」といった外部環境はもちろん大切ですが、それに加えてみなさん自身の内部環境である家計の状況や、将来に向けてのライフプランも考慮したうえで、タイミングがあった時こそが本当の買い時ではないでしょうか。
そんなに難しく考える必要はありません。「家が欲しい」と思ったら、いくら借りられるか、借りたお金をきちんと返せるかということを考えれば良いのです。この年末年始の機会にぜひ一度ゆっくり考えてみてくださいね。

私が書きました

黒田 尚子 (くろだ なおこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、第2種情報処理技術者、初級システムアドミニストレータ。

92年大学卒業後、日本総合研究所に入社。約5年3ヶ月間、システム開発に携る。退社後、98年ファイナンシャル・プランナーとして独立。 まったくの異業種からの転職のため、できるだけ幅広いテーマを手掛けるようにしている。雑誌・インターネットなどの連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを行う。モットーは「夢をカタチに」。現在、夫1人&猫1匹と暮らす。

※執筆日:2009年12月17日