第300回

保険で安くお金が借りられる?

保険に入っていると、保険会社から安くお金が借りられると聞きました。ローンを組むより有利なのでしょうか?何かデメリットはないのでしょうか?(M.Iさん 28歳男性 会社員)
保険には「契約者貸付」という融資制度があり、比較的低い金利でお金を借りる事ができます。ただし、保険の種類によってはその制度が利用できなかったり、借入限度額が小さかったり、金利が高いケースもあり、必ずしもローンより有利とは言い切れません。

お金を借りられる保険とは?

「契約者貸付制度」を利用できるのは、生命保険の「終身保険」「養老保険」「個人年金保険」や、損害保険の「積立保険」など、貯蓄性のある種類の保険に加入している場合です(契約したばかりや満期直前など、借りられない時期もあります)。一部の「定期保険」や「自動車保険」など、掛け捨てタイプの保険では利用する事ができません。

上記のような貯蓄型の保険の契約者であり、解約返戻金の80~90%の範囲内であれば、いくらでも自由に借りられるというのが一般的です。このように金額は限られますが、審査も無くて便利ですし、借りている間も保険は継続され、配当金も得られるので安心ですね。

金利は保険会社、契約によって違う

「契約者貸付」は、自分が将来もらう予定のお金を前借りするイメージですが、利息はしっかりとられます。では、その金利はどのぐらいでしょうか?実は金利(貸付利率)は、その保険の契約時期による場合や、借りる時期による場合など、保険会社ごとにルールが違います。ここでは日本生命保険相互会社の場合で見てみましょう。日本生命では対象となる保険の契約時期によって、金利を3段階に分けています。

契約者貸付利率(日本生命の場合)

保険契約日 貸付利率
平成6年4月1日以前 年5.75%
平成6年4月2日~平成8年4月1日 年4.75%
平成8年4月2日以降 年3.75%

(平成21年1月現在)

平成6年4月1日以前の保険では、貸付利率が約6%と、それなりに高くなっています。つまり、昔の予定利率が高い保険で借りると、支払う利息も多くなってしまうのです。また、利息は複利で計算されるため、借入期間が長ければ雪だるま式に膨れ上がる事にも注意が必要です。例えば、自動車の購入や、お子様の学費など資金使途があらかじめ決まっている場合は、自動車ローン教育ローン目的別ローン等、資金使途に合ったローンを組む方が有利な場合もあるので、必要に応じてよく比較検討してみると良いでしょう。

コールセンターで問い合わせを

返済については、一部、又は全部をいつでも自由に返す事ができます。返済しないままでいると、保険金や満期金をもらう時に、その分を差し引かれて精算されます。借りた金額とその利息が解約返戻金を越えてしまったり、保険会社が通知した金額を期日までに払い込まなかったりすると、その保険は失効になってしまいます。返済計画をしっかり立てなければいけないのは、ローンと同じですね。

保険会社のコールセンターで証券番号を言えば、借りられる金額、貸付利率、手続方法を教えてくれます。情報を集め、ローンを組む場合と比べて、総合的に判断すると良いでしょう。

私が書きました

神田 理絵 (かんだ りえ)

ファイナンシャル・プランナー、住宅ローン・アドバイザー、心理カウンセラー。

大学卒業後、大手総合商社へ入社し、貿易事務に携わる。その後、税理士事務所、社会保険労務士事務所を経て2005年に独立。現在は生命保険や住宅ローンの見直し、資産運用に関する相談や、各種マネーセミナー、FP資格取得講座の講師、コラムの執筆等で活躍中。大人だけでなく、小学生向け金銭教育活動にも力を注いでおり、首都圏を中心に、今までの実務経験と女性の感覚を生かした独立系FPとして活動中。

※執筆日:2009年01月20日