第293回
貸し渋りの波が再来!今後の資金調達はどうなる?
- 従業員10名程度の小さな鉄工所を経営しています。最近、銀行の融資担当者が変わったのを機に従来から受けていた融資の額を減らされました。最近よく新聞等で貸し渋りや貸しはがしに関するニュースが出てきますが、その度に、これから資金調達をどうしたらよいのか不安でたまりません。(J.Nさん 53歳・鉄工所経営)
- 欧米の金融不安の影響や国内景気が低迷する中で、民間金融機関を取り巻く環境は悪化しています。それに伴い、銀行などでは、融資先の選別が厳しさを増してきています。資金繰りは企業にとって「命綱」ともいうべきものですが、キャッシュフローをリアルタイムに把握し、できるだけ資金を社外に頼らない経営が必要な時なのかもしれません。また、資金調達先は必ずしも銀行ばかりとは限りません。「日本政策金融公庫」などの政府系金機関もありますので、資金調達先を多様化しておくことも重要です。
「貸し渋り」「貸しはがし」の波が再来!?
サブプライムローン問題に始まり、米証券リーマン・ブラザーズの破たんなどの欧米の金融不安の影響で、世界中の株式市場も暴落。その後も乱高下を繰り返し、国内の金融機関を取り巻く環境は悪化しています。そんな中、中小企業に対する「貸し渋り」や「貸しはがし」などの波が再来しているようです。
以前からよく新聞・TV等で聞く「貸し渋り」とは、不良債権になるのを恐れて銀行などがお金を貸してくれないことをいいます。そして、最近ではこの言葉とセットになって「貸しはがし」という言葉もよく出てくるようになりました。これは、金融機関が貸したお金の元金と利息の返済を迫るというもので、例えば、遅滞なく返済しているにもかかわらず、ある日突然一括返済を求める通知が届き、返済できないとなると商品代金等の差し押さえなど強硬な手段で返済を迫ってきます。借りたからには返すのが当たり前ですが、あまりにもそのやり方が過酷なため、まるで身ぐるみはがすような印象を受けるこんな言葉で表現されているのかもしれません。
「貸し渋り」倒産が過去10年間で最多件数に
中小企業にとっては、資金繰りは命綱。貸し渋りでも貸しはがしでも、銀行などの金融機関がお金を貸してくれなければ、資金調達ができなくなります。黒字になっているにも関わらず、お金のやりくりができなくなって倒産してしまう、いわゆる「黒字倒産」の企業が、最近増加しています。
東京商工リサーチの調査によると、今年1~10月までの倒産件数約1万3,000件のうち、件数が最も多かったのは「販売不振」約8,500件でしたが、前年と比較して増加率が最も高かったのが「運転資金の欠乏」でした。そして、この「運転資金の欠乏」が原因で倒産した企業は、最近10年間で最多となっており、融資などを得られず資金繰りに窮する中小企業の厳しい現状を反映しているようです。
資金調達先の多様化も課題の一つ
銀行などからの借入を減らすためには、自社ビルや社宅などを売却して資産を圧縮する方法や、株主等からの増資や自ら利益を生み出して資金を出し資本を増強する方法などありますが、中小企業にとっては、なかなか難しい課題です。そこで、負債の中身の組み替えも一つの方法。資金調達先は、銀行などの民間金融機関だけではありません。今年10月に再編された「日本政策金融公庫」などの政府系金融機関もあります。
日本政策金融公庫は、国民生活金融公庫や中小企業金融公庫などの4機関が統合して誕生したもので、貸出残高が25.5兆円に達するりそなホールディングスに匹敵する「メガ公庫」です。中小の零細企業や農林漁業関係者など大手銀行や地方銀行では対応しきれない融資をカバーし、現在の貸出残高を減らさない方針を打ち出しています。
今後は、銀行などの民間金融機関だけでなく、これら公的金融機関も利用しながら資金調達先を多様化させ、負債の中身を組み替えることも常に検討しておくことが必要ではないでしょうか?なお、「日本政策金融公庫」の詳細については、過去のアドバイスを参照ください。