第221回
どちらがオトク?今年の住宅ローン控除
- 今年か来年には、マイホームを購入する予定です。今年の税制改正で、住宅ローン控除の控除期間が10年と15年の選択制になったと聞いていますが、どちらを選べばよいですか?(横浜市在住N.O.さん、38歳)
- 平成19年度税制改正によって、平成19年および平成20年に居住した場合、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)については、控除期間が10年と15年のいずれかを選択適用できるようになりました。
これまでの住宅ローン控除は?
そもそも、「住宅ローン控除」とは、金融機関から借入れ(したがって、親族からの借入、いわゆる「親ローン」は対象外!)をして、住宅の取得や増改築などをした場合、一定の要件に該当すれば、年末のローン残高に応じた税額控除(所得税額から一定の金額を差し引くこと)ができる制度です。銀行などで住宅ローンを組んで、マイホームを購入した人にとっては、必ずチェックしておきたい制度といえます。
これまでは、控除期間は10年間で、控除できる金額は、それぞれの年の住宅ローンの年末残高に応じた一定金額となっています。(次表参照)
【改正前の住宅ローン控除】
居住年 |
ローンの年末残高限度額 |
控除期間 |
控除率 |
最大控除額 |
|
平成19年 |
2,500万円 |
10年 |
1~6年目 |
1% |
200万円 |
7~10年目 |
0.5% |
||||
平成20年 |
2,000万円 |
10年 |
1~6年目 |
1% |
160万円 |
7~10年目 |
0.5% |
今年の住宅ローン控除はこう変わった!
それが、平成19年度税制改正では、控除期間について、従来の10年に加えて15年のどちらかを選択できる特例措置が創設されました。
これは、昨年度の税制改正によって、平成19年から所得税・住民税の税率が改正されたため、住民税率が10%に固定され、その分、中低所得者の所得税率が下がったことによって、住宅ローン控除額の控除しきれない部分が生じたためです。
この控除不足部分については、平成11年から平成18年までに居住した場合であれば、翌年度の住民税から控除できる制度が、すでに平成18年度税制改正で創設されています(本来、住宅ローン控除は、住民税には適用不可)
そして、平成19年および平成20年に居住した場合には、このような措置ではなく、控除期間を15年に延長することで、控除不足部分を減少させる方法に変更されたのです。
【改正後の住宅ローン控除】
居住年 |
ローンの年末残高限度額 |
控除期間 |
控除率 |
最大控除額 |
|
平成19年 |
2,500万円 |
15年 |
1~10年目 |
0.6% |
200万円 |
11~15年目 |
0.4% |
||||
平成20年 |
2,000万円 |
15年 |
1~10年目 |
0.6% |
160万円 |
11~15年目 |
0.4% |
10年と15年?どちらがオトク?
では、どちらを選択すればよいのでしょうか?
10年を選択した場合、1年当たりの控除額は多くなるものの、控除期間は短くなり、15年を選択した場合、1年当たりの控除額は少ないものの、控除期間は長くなります。
一般的には、高所得者であれば、現行制度(10年)でも、住宅ローン控除額を控除しきれないということはなく、所得税率が下がったために、控除不足部分が生じる人については、特例措置(15年)を選択した方が有利ということになります。
ただし、実際には、利用者の年収や所得税額(自分が支払った所得税以上の金額は戻ってきません!)、住宅ローンの借入金額等によって、どちらが有利になるかはケースバイケースです。
さらに、現在共働きでガンガン住宅ローンを返済できるが、子どもができたら妻は専業主婦になる場合や、繰上げ返済を重視したい場合、転勤族の場合など、個別の事情によっても、どちらを選択すべきか異なります。
いずれにせよ、利用する場合は、自分自身の所得税・住民税の税額を確認し、今後のライフプランも含めて、じっくり検討する必要がありそうです。
なお、平成19年度税制改正の住宅・土地税制の詳細については、次の財務省HPを参照下さい。
<参考サイト>平成19年度税制改正「住宅・土地税制」:財務省