第1110回NEW

不動産の担保設定状況を確認する方法は?

父が亡くなり、相続について兄弟で話し合うことになりました。父に借入がないか、父名義の不動産が担保になっていないかなどを調べておきたいと思います。どうやって調べればよいでしょうか。(会社員、45歳)
不動産の所有者や担保設定状況などは、登記事項証明書(登記簿謄本)や登記情報提供サービスで確認できます。
所有する不動産のイメージ

不動産の担保設定状況は「登記事項証明書」で確認

不動産を相続する場合や不動産を担保にローンを利用したい場合などに確認したい、不動産の所有者や担保設定状況は、登記事項証明書(登記簿謄本)で確認できます。登記事項証明書は所有者等に限らず、誰でも請求・交付を受けることができます。

「登記事項証明書」は耳慣れない用語かもしれませんが、記載されている登記情報は「登記簿謄本」と同じです。以前は、登記事項が記載されている用紙をコピーしたものが「登記簿謄本」として交付されていましたが、登記事務のコンピュータ処理が進み、データを印刷したものが「登記事項証明書」として交付されています。

登記事項証明書の交付請求は、最寄りの地方法務局・支所などの窓口で請求するほか、郵送、インターネットを利用して行うことができます。ただし、交付(受け取り)は、窓口・郵送に限られます。

手数料は、窓口での請求は600円ですが、オンライン請求の場合は郵送で受け取る場合は500円、窓口で受け取る場合は480円と割安になっています。

また「法務局証明サービスセンター」では、不動産登記及び商業・法人登記の登記事項証明書、会社・法人の印鑑証明書等をその場で取得することができます。「法務局証明サービスセンター」は、法務局庁舎外の最寄りの市役所庁舎などで、登記に関する証明書を取得することができる法務局窓口です。

ただし、オンライン請求の場合や、法務局証明サービスセンターを利用する場合は、対象となる証明書に限りがあるので、事前に法務局のホームページなどで確認してください。たとえば、オンライン請求の場合は、不動産に関する登記事項証明書について,全部事項証明書,現在事項証明書及び閉鎖事項証明書(電磁的記録に記録されているものに限る)の交付の請求をすることができますが、共同担保目録及び信託目録の一部の指定をすることはできません。

また、インターネット上で登記事項を確認できるサービスもあります。「登記情報提供サービス」は、法務局が保有する登記情報を、インターネットを使用してパソコン等の画面上で確認できる有料サービスです。登記情報はPDFファイルで提供され、印刷も可能です。ただし、登記事項証明書と異なり、証明文や公印等は付加されません。不動産登記情報の全部事項の情報を得るための料金は331円です。

担保(抵当権)については、「乙区」「共同担保目録」で確認する

登記事項証明書には、全部事項証明書・現在事項証明書・閉鎖事項証明書・一部事項証明書があります。「全部事項証明書」には過去から現在に至るすべての履歴(所有権や抵当権などの権利関係や所有者の変更など)が記載されているので、登記事項を確認したいのであれば、「全部事項証明書」を請求されるとよいでしょう。

登記事項証明書は、下記のように4つの部分で構成されています。借入の担保とされていないか(抵当権が設定されていないか)を確認したいのであれば、「権利部乙区」と共同担保目録を確認します。交付申請書には「共同担保目録」を付加するかどうかの確認欄があるので、チェックを入れて手に入れましょう。

たとえば、自宅の建物・土地の両方が借入の担保となっている(抵当権が設定されている)場合には、建物と土地のどちらの登記事項証明書にも共同担保目録に建物と土地が担保となっている記載があります。したがって、土地の登記情報の「共同担保目録」を見れば、「建物にも抵当権が設定されているのか」とわかることになります。

登記事項証明書の構成
表題部 不動産を特定するための情報(所在地や面積、構造など)が記載されている。
権利部(甲区) 権利に関する情報のうち、所有権について記載されている。
権利部(乙区) 権利に関する情報のうち、所有権以外の権利(抵当権や賃借権、地上権など)について記載されている。
共同担保目録 抵当権を設定したときに担保として提供された不動産が複数ある場合に、それらがまとめて記載されている。権利部(乙区)の抵当権と合わせて確認する。

対象不動産に抵当権が設定されていると、希望どおりに不動産担保ローンが利用できないことも

不動産担保ローンの利用を考えられている場合には、抵当権の設定状況によっては希望するローンが利用できない場合もあります。

抵当権は登記が早い順番で順位が決まります。ローン利用者(債務者)が返済できなくなった場合には、担保となっていた不動産を売って弁済することになりますが、抵当権が複数設定されていた場合は、抵当権設定順位が早い抵当権者から優先して弁済を受けることになります。したがって、すでに抵当権が設定されていた場合、新たなローンの抵当権の順位は低くなる、すなわち万一の場合の弁済の可能性が低くなるため、新たなローンは利用できない可能性があるのです。

ただし、必ずしも不動産担保ローンが利用できないというわけではありません。

担保の条件は、ローン商品によって異なります。「不動産に第一順位の抵当権を設定させてもらう」「抵当権第一順位以外での借入不可」とういうものもあれば、「住宅ローンが残っていても担保余力の範囲内で可能」というものもあります。対象不動産の抵当権設定状況を確認したら、不動産担保ローンの「担保」欄を比較検討されるとよいでしょう。

このように、登記情報は手数料を支払えば、だれでも確認することができます。相続の際や不動産担保ローンを検討する際に、不動産の所有権や抵当権などが気になったら、法務局や登記情報提供サービスのホームページで、登記情報の請求方法をご確認ください。

【参考リンク】

私が書きました

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大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2024年12月18日