第1102回
ビジネスローンは総量規制の対象外!?条件をチェック
- 個人で事業を営んでいますが、資金繰りが厳しい状況です。審査がスピーディなビジネスローンを利用したいと考えています。個人事業主でも総量規制の上限の制限は関係ありますか?(Yさん 50代)
- 総量規制では年収の3分の1までという制限がありますが、ビジネスローンの場合、上限に制限がなく借入れが可能となる場合もあります。
総量規制とは?
総量規制とは、貸金業法により個人が貸金業者(消費者金融やクレジットカード会社)からお金を借りる場合の上限を「年収の3分の1まで」と規制するもので、過度の借り入れから消費者を守るための制度です。
個人がどのくらい借り入れをしているかは、シー・アイ・シー(CIC)や日本信用情報機構(JICC)等の信用情報機関に登録・管理されています。複数の貸金業者から借り入れをしているケースもあるので、貸金業者は審査の際、信用情報機関に個人情報の照会をし、年収の3分の1を超える融資をしないようにしているのです。
なお、貸金業者ではない銀行や信用金庫等が行うローンは総量規制の対象外ですが、自主規制により制限を設けています。
総量規制対象外になる条件は?
消費者を守るための総量規制なのですが、貸金業者からの借り入れの全てが総量規制の対象となるわけではありません。例えば、総量規制になじまない貸付けである「除外貸付け」は、そもそも貸付金額が高額である場合が多く、年収の3分の1という基準を適用するのが不適当なため、総量規制が適用されません。
除外貸付けの例
- 不動産購入のための貸付け(いわゆる住宅ローン)
- 自動車購入時の自動車担保貸付け(いわゆる自動車ローン)
- 高額療養費の貸付け
- 有価証券を担保とする貸付け
など
(出典:日本貸金業協会ホームページ)
また、消費者の利益の保護に支障が生じない貸付けである「例外貸付け」は、返済能力に問題がない場合や借り入れの必要性・緊急性が高い場合に年収の3分の1を超えた貸付けを例外的に認めるものです。具体的には、下記のような貸付が該当します。
例外貸付の例
- 事業計画等により返済能力が認められた個人事業主への貸付け
- 有価証券を担保とした貸付け
- 緊急の医療費のための貸付け
- 配偶者と合算した年収の3分の1以下の貸付け
- 借り手が一方的に有利になる借り換え
など
(出典:日本貸金業協会ホームページ)
つまり、個人事業主の方が返済能力を認められた場合、ビジネスローンで総量規制の制限を超えた借り入れが可能となるのです。
ビジネスローンで総量規制を超えて借りる場合の注意点
総量規制を超えてビジネスローンを利用する際、返済能力の審査には、貸金業者が指定する書類を提出する必要があります。一般的には、事業・資金・収支計画等です。
また、借入金額が100万円以下の場合には、事業計画等の提出の代わりに事業や収支・資金繰りの状況が確認できる書面の提出でも可能となる場合もあります。必要な書類が早く揃えば審査もスムーズです。普段から、帳簿の記入や事業資金の入出金のチェックは怠らないようにしておきたいものです。
なお、ビジネスローンの資金使途は事業資金に限られます。生活費やレジャー資金等が不足する場合は、個人としてカードローンやフリーローンを利用することになりますが、こちらは総量規制の対象となります。個人事業主の事業所得のうち、安定的な収入を「年収」として年収の3分の1まで借り入れができますが、別途、所得証明書として確定申告書等の提出が必要です。
急な事業用の資金調達には、審査から融資実行までの期間が比較的短いビジネスローンが適しているといえますが、今後は資金繰りで困らないよう、余裕をもった事業運営を目指しましょう。早めに返済してなるべく利息の負担を減らすことも心がけましょう。
私が書きました
ファイナンシャルプランナー(CFPR)。
大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。
※執筆日:2024年10月21日