第1080回
共働き時代の住宅ローン、どんな方法がある?
- 住宅購入を予定しており、住宅ローンについても調べています。希望する物件の価格が高めですが、夫婦共働きなので、多めに住宅ローンを組めばよい、と考えています。夫婦で住宅ローンを利用する方法を教えてください。(福岡県Mさん)
- 夫婦で住宅ローンを利用する方法には、夫婦それぞれで住宅ローンを契約するペアローンのほか、夫婦の収入を合算して1本のローンを利用する「連帯債務」と「連帯保証」の2つのタイプがあります。
夫婦共働き世帯は増加中
共働きのご家庭は近年増加しています。特に、夫婦共にフルタイム勤務で高収入の「パワーカップル」と言われる世帯が増加しているとの報道も目にするようになりました。
夫婦ともに一定以上の収入が継続的に得られるのであれば、住宅ローンの返済を夫婦で続けていくことも可能です。希望物件を購入するためには、1人分の収入に対する住宅ローンでは資金準備が難しい場合は、住宅ローンを夫婦それぞれで借りたり(ペアローン)、夫婦2人分の収入で借入可能額を計算したり(収入合算)することも選択肢になるでしょう。
夫婦で住宅ローンを利用する方法を確認しておきましょう。特に、住宅ローン返済中に契約者が死亡・高度障害となった場合に保険金でローンが完済される団体信用生命保険(団信)、住宅ローン利用者に対する税金の優遇制度である「住宅ローン控除」※との関係をチェックしておきましょう。
※住宅ローン控除…年末の住宅ローン残高に応じて一定額が所得税などから控除される制度。控除期間最大13年もしくは10年(入居年や新築か中古かによって異なる)。
団信加入 | 住宅ローン控除の対象 | 物件の持分 | 返済口座 | ||
---|---|---|---|---|---|
夫単独 | 夫 | 夫 | 夫 | 夫 | |
ペアローン | 夫・妻 | 夫・妻 | 夫・妻 | 夫・妻 | |
収入合算 | 連帯債務型 | 夫・妻※ | 夫・妻 | 夫・妻 | 夫 |
連帯保証型 | 夫 | 夫 | 夫 | 夫 |
※夫婦連生型の場合。利用できる団信によっては、夫のみの場合がある。
夫婦それぞれで借りる「ペアローン」
「ペアローン」は、1つの物件に対して夫婦がそれぞれ契約者として、同じ金融機関から住宅ローンを借りる方法です。夫と妻がそれぞれ相手の連帯保証人となります。
2本のローンを利用することになるので、合わせた借入可能額は1人分よりも多くなるのが大きなメリットです。ただし、手数料や保証料なども2本分かかることには注意が必要です。
住宅ローン控除は、夫婦それぞれが受けられます。控除額は、持分に応じて計算されます。
団信には夫婦それぞれ加入することになるので、返済中に夫婦のどちらかが死亡した場合には、死亡した人が借りていたローンは保険で完済されます。しかし、生存しているほうのローンはそのまま返済が続きます。
収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」がある
収入合算は、契約するのは1本の住宅ローンですが、夫婦の収入を合算して計算することで、借入可能額を増やすことができる仕組みです。収入合算には連帯債務型と連帯保証型があります。
連帯債務型
連帯債務型は、夫婦のどちらもが「債務者」となり、住宅は夫と妻の共有名義になります。持分割合に応じて、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けることができます。
連帯債務型を取り扱う金融機関は多くありませんが、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利型住宅ローンである【フラット35】で収入合算を行う場合は、連帯債務型となります。
連帯債務の場合の団信については、原則的には、主たる債務者のみが加入します。連帯債務者は団信の対象とならないので、連帯債務者が死亡しても主たる債務者は返済を続けることになります。しかし、夫婦双方が保障対象となる「夫婦連生型」の団信が利用できる場合は、連帯債務者も保障対象となります。
【フラット35】で連帯債務型を利用する場合には、夫婦双方が保障対象となる」「デュエット(夫婦連生団信)」を利用できます。
連帯保証型
連帯保証型は、夫婦のどちらかが債務者、もう一人は連帯保証人となる制度です。連帯保証人は、債権者から債務の履行(返済)を求められたときには、全額応じる責任を負います。収入合算を利用できる金融機関の住宅ローンの多くは、連帯保証型となっています。
連帯保障型の場合、債務者は1人なので、住宅ローン控除は1人しか受けられません。
また、団信の保障対象も債務者のみが対象となります。たとえば、債務者が夫、連帯保証人が妻だった場合、妻が亡くなっても、団信で保障されないため、ローン返済はそのまま続きます。妻の収入もアテにして返済プランを組んでいた場合には返済が難しくなるので注意が必要です。
収入が安定していればペアローンが選択肢に
このように、夫婦で住宅ローンを利用する方法には、ペアローンや収入合算があります。
ペアローンを利用する場合は、一定以上の収入があり、かつ継続的に収入が得られるかどうかがポイントとなるでしょう。収入額に基づいて借入可能額が決まりますし、団信にもそれぞれ加入することになるので、夫婦のどちらかが亡くなってももう一方の返済は続くことを考えると、夫婦とも、継続して収入を得られることが条件になります。また、夫婦どちらかの収入減により、もう一方が返済を肩代わりするようになると、住宅の持分と合わない出資割合になるため、贈与税の対象となる可能性があります。
現在は夫婦ともに収入があるが、将来は収入減の可能性がある場合には、収入合算(連帯保証型)も検討しましょう。連帯保証型の場合、債務者は1人、持分がある家の名義人も1人なので、債務者が返済を続けることができれば、連帯保証人の収入が減少した場合でも、ペアローンの場合のように贈与税の対象となることはありません。
なお、【フラット35】にはペアローンの制度がないので、夫婦で利用したい場合には、収入合算(連帯債務型)を選ぶことになります。
いずれにせよ、ローンを借りたら、返さなくてはなりません。どの方法を選ぶにせよ、借り入れを決めた金額を将来にわたって無理なく返済できるかどうかをよく検討した上で、住宅ローンの借入方法を選んでください。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。
大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。
※執筆日:2024年05月21日