第1067回
インボイス制度で個人事業主は消費税の確定申告が必要に!
- 2023年9月までにインボイス発行事業者の登録を受けた個人事業主です。インボイス制度導入後初の確定申告が迫りますが、何をしなければいけないのでしょう?消費税の納税も必要なのでしょうか?(Kさん 個人事業主、40歳)
- 所得税の確定申告以外に、消費税の確定申告と納税が必要です。条件が合えば、当面は少ない作業負担で税額が抑えられる「2割特例」を利用できます。これからは、消費税納税の資金も準備しておく必要があります。
3月31日(2024年は4月1日)までに消費税の確定申告を
インボイス制度とは、2023年10月1日からスタートした消費税の仕入税額控除の方式を指し、売上に含まれる消費税額から、仕入れで支払った消費税額を引いて、重複なく納税するためのルールです。正式には「適格請求書等保存方式」といい、企業などに請求をする際には、商品等の金額とともに、消費税率、消費税額が記載された「インボイス(適格請求書)」を発行しなくてはなりません。
以前は、消費税課税事業者に該当しない、規模の小さい個人事業主等は、消費税の納税が免除されていました。しかし、Kさんのように、2023年10月のインボイス制度スタートとともに課税事業者に登録をした個人事業主は、所得税の確定申告とともに、消費税の確定申告も行わなければならなくなったのです。
インボイス制度は2023年10月に導入されたため、10~12月の分の申告と納税を、2024年4月1日(月)までに行う必要があります(本来の申告期限である3月31日が休日のため)。
条件が合えば「2割特例」の適用も
消費税は所得税と異なり、売上に対してかかる税金です。売上や仕入等を、税率(8%・10%)で分けて記帳し、保存しておく必要があります。消費税を計算する制度は下記の3つであり、条件によって利用できる制度が異なります。
一般課税制度
消費税課税事業者で、一定以上の売上がある場合に適用になります。売上にかかる消費税額から仕入にかかる税額を実額で差し引いて計算します。仕入先から受け取るインボイスを保存しておかなくてはなりません。最も事務負担が重い、厳密な計算となります。
簡易課税
条件に合い、「消費税簡易課税制度届出書」を税務署に出した場合に適用になります。売上にかかる消費税額からみなし仕入率をかけた金額を引いて、納税額を計算します。仕入率は業種ごとに決まっています。仕入や経費の実額計算が不要で、仕入先から受け取るインボイスを保存する必要もありません。その名の通り、計算が簡易で済みます。
2割特例
2026年度分までの特例措置ですが、インボイス制度導入を機に課税事業者になった人で「2年前の課税対象売上が1000万円以下である」などの条件を満たす場合に利用できる制度です。売上にかかる消費税額から、業種を問わず売上税額の8割を仕入にかかる消費税額として差引き、納税額を計算します。売上にかかる消費税額の2割を納税すればいいので、作業負担が少ないうえ、多くの業種において一般課税や簡易課税より納税額が抑えられます。インボイス保存の義務もありません。あくまでも特例措置のため、2027年度以降は、簡易課税か一般課税の該当する方で申告することになることは頭に置く必要があります。
消費税納税資金の準備も必要
Kさんもおそらくは2割特例の対象となるのではないかと思います。確定申告と重なって大変ですが、期限までの消費税の申告と納付を行いましょう。申告は国税庁のe-taxで行うことができます。
納付も、口座振替やネットバンキング、クレジットカード払い、スマホアプリ等で支払えます。期日までの納税資金の準備が心配な方は、納税の猶予制度やビジネスローンを利用して一時的な出費に備える方法もありますので、事前に確認しておきましょう。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。
20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。
※執筆日:2024年02月16日