第1063回
実家の修繕にリフォームローンは利用できる?
- 大学時代から地方の実家を離れ、現在は神奈川県に住居を構えている40代後半の会社員です。年末年始などに帰省をすると、古い実家のあちこちが傷んでいたり、設備が劣化していたりすることに気が付きます。両親がこの先の老後も暮らしやすいように、実家のリフォームをしてあげたいと思いますが、親と別居している子どもが実家を修繕する時に、リフォームローンは利用できるのでしょうか。(神奈川県 40代 男性 会社員)
- 親と別居している子どもでも、実家の修繕にリフォームローンを利用できる金融機関もありますが、同居を条件としている金融機関もあります。金融機関によって対応が異なるため、事前に条件を確認して適切な金融機関を選ぶ必要があります。なお、資金の使途が自由のフリーローンであれば、どの金融機関でも、同居・別居にかかわらず実家のリフォーム費用に充当することができます。 親名義の家のリフォーム資金を子どもが負担する場合には、ローン活用の有無にかかわらず子どもから親への贈与となり、贈与税の課税対象になる場合があることにも注意が必要です。
別居している親の家(実家)を修繕するのに、子どもがリフォームローンを利用できる金融機関もある!
リフォームローンは、金融機関ごとに借入条件が異なっていますが、別居している子どもが、親の家(実家)の修繕等をする際に利用できる金融機関もあります。そのような金融機関では、資金使途を「本人または親族等が所有する住宅のリフォーム資金」、あるいは「本人を施主とする自宅や実家等のリフォーム資金」などとしており、必ずしも同居を条件にしていません。しかし、金融機関によっては、資金使途を「本人または同居の家族所有の住宅のリフォーム資金」などとし、同居を条件としているところもあります。
したがって、親と別居している子どもが実家の修繕をする目的でリフォームローンを利用したい場合は、事前に調べ、対応可能な金融機関を選ぶ必要があるでしょう。
なお、リフォームローンよりも金利が高い傾向はあるものの、資金使途が自由のフリーローンであれば、同居・別居にかかわらず、実家のリフォーム費用にも利用することができます。フリーローンは多くの金融機関が取り扱っており、選択肢として検討してもいいかもしれません。
親名義の実家のリフォーム資金を子どもが負担する場合は、子どもから親への贈与になり、贈与税の課税対象になることも!?
ローンの活用の有無にかかわらず、親名義の実家のリフォーム資金を子どもが負担する場合には、子どもから親への贈与となり、贈与税の課税対象になって親が贈与税を納めなければならない場合があるので注意が必要です。
ただし、暦年贈与の仕組みでは、暦年(1月1日から12月31日の1年間)で総額110万円(基礎控除額)までの贈与には贈与税は発生しません。リフォームの種類には、規模の大きい増改築もあれば、浴槽・トイレ・キッチンなど、住宅設備機器の購入などもあるため、費用が110万円以内のリフォームを実施する方法もあります。
金額が大きい場合、たとえば、リフォーム費用が500万円だとすると、子どもから親へ500万円が贈与されたことになり、暦年贈与の場合、親は53万円の贈与税を支払わなければなりません。
リフォーム資金を負担する子どもが、将来親の家を相続することが予定されている場合は、リフォームする前に、実家を親名義から子どもの名義に変更することで、トータルでの税負担等を抑えることができる場合があります。例えば、リフォーム前の実家の価値が100万円の場合、親名義から子ども名義に変更すると、親から子どもへ100万円が贈与されたことになりますが、暦年贈与の仕組みでは、基礎控除額110万円の範囲内なので、子どもは贈与税を支払う必要はありません。仮に、実家の価値が200万円の場合は、子どもが払う贈与税は9万円です。ただし、名義変更に伴って登録免許税や不動産取得税、司法書士に払う登記手数料などが、別途合計で数万から十数万円程度かかります。
実家の価値が高い場合は、相続時精算課税制度という別の贈与の仕組みを利用して、実家を親の名義から子どもの名義に変更することができます。この制度は、2,500万円までの財産を非課税で子どもや孫に贈与できる仕組みです。
いずれの贈与の仕組みを活用しても、リフォーム前に実家の名義を親から子どもに変更すれば、子どもが実施するリフォームは、子どもが自分の家に対して自分の資金で行うことになるため、子どもから親への贈与にはなりません。
なお、親から子へ贈与をするとき、暦年贈与の仕組みを利用するか、相続時精算課税制度を利用するかの制度選択は、親が保有する財産の金額やその種類、配偶者の有無や子どもの数などを踏まえ、将来の相続税対策、納税資金対策、遺産分割対策を含めた相続全体の枠組みの中で検討する必要があります。場合によっては、税理士に相談したほうがいいでしょう。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。
教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。
※執筆日:2024年01月18日