第1031回

奨学金の緊急採用・応急採用とは?

大学生の子がいるのですが、勤務先が倒産し、今後の学費が払えるか心配です。緊急時であれば年度の途中でも奨学金を利用できると聞いたのですが、詳細を教えていただけますでしょうか。なお、これまでは奨学金を利用していません。(Kさん 会社員 50歳)
予期できない事由により家計が急変した場合は、随時、貸与型奨学金を申込むことができます。条件が合えば給付型奨学金の対象になる場合もあります。学校の奨学金窓口で相談してみるといいでしょう。

家計が急変したら、奨学金を随時申込むことが可能

奨学金は申込みの時期が決まっていますが、生計維持者の失職、破産、事故、病気、死亡等もしくは火災、風水害等の災害等により家計が急変した場合は、随時、申込むことが可能です。第一種奨学金(無利子)では「緊急採用」、第二種奨学金(有利子)は「応急採用」と呼ばれ、早ければ申込みをした翌月から奨学金を利用することができます。利用を希望する際は、在学している大学等に相談しましょう。

ただし、随時申込みの対象者は、短期大学・大学・大学院・専修学校(専門課程)・高等専門学校に在学中の学生で、家計急変の事由が生じてから12か月以内となります。それぞれの「学力基準」や「家計基準」を満たしていることも条件ですが、家計基準に関しては、従前は対象外であっても、家計急変の事由により、その後1年間の家計が収入基準額の範囲になると見込まれると、申込みができる可能性があります。

貸与は第一種奨学金であれば採用年度末までですが、1年ごとに「緊急採用奨学金継続願」を提出すれば、修業年限を限度として延長することもできます。第二種は修業年限までです。貸与月額は第一種奨学金で2万~6.4万円、第二種奨学金で2万~12万円となります(国公立か私立か、自宅通学か自宅外か等で異なります)。

なお、給付型奨学金の「家計急変採用」も随時申込みは可能ですが、家計急変の事由が生じてから3か月以内となります。給付型奨学金は住民税非課税かそれに準じた世帯が対象ですが、金融資産額にも条件があります。

家計急変時に民間ローンは利用できる?

家計が急変したことによる教育資金不足を急ぎ補いたい場合に、民間の教育ローンなどを検討されるかもしれません。しかし、Kさんのように失業が原因となると、「安定・継続した収入」といったローンの利用条件に当てはまらないため、利用することは難しいでしょう。

早めに再就職先を見つけることと、家計の急変に耐えられる生活予備費(生活費3~6か月分)を常にキープしておくことも大事ですね。

【参考リンク】

私が書きました

豊田 眞弓 の写真

豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2023年06月14日