第1008回
フリーローンの借入希望金額は、支出予定金額どおりに決めれば大丈夫?
- 引っ越しを予定しています。引っ越し費用や家具・家電購入費用がかさむため、ローンの利用を考えています。借りすぎが心配なのでフリーローンがよいかと思っているのですが、引っ越しや家具家電にかかる費用がはっきりしないので、いくら借り入れるべきか、迷っています。(愛知県 Sさん)
- フリーローンは、1回の申込みで1回の借り入れができるローンです。カードローンのように何度も借り入れはできないので、使用目的の実現に過不足なく、返済に無理のない金額を慎重に検討しましょう。
借り入れごとに申込み・審査を受けるフリーローン
フリーローンは、資金使途に制限のない(事業性資金や投資性資金は除く)証書貸付方式のローンです。借り入れを申込んだら審査を受け、承認されたら、金銭消費貸借契約書を交わして融資を受けます。引っ越し費用や家具家電の購入費用、楽器やスポーツ用品、パソコン・周辺機器などの高額な買い物、旅行費用、自費診療による歯科治療など、さまざまな使途での利用が可能です。
資金使途に制限のないローンにはカードローンもありますが、契約した限度額までなら何度でも借り入れ可能なカードローンとは異なり、フリーローンは融資承認後、借り入れは1回だけ。再度借り入れたい場合は改めて申込み、審査を受けなければなりません。カードローンのように、つい何度も借り入れてしまうこともなく、借入金額がふくらんでいくこともありません。1回借り入れたら返していくだけなので返済計画も立てやすく、借りすぎが心配な方にも利用しやすいでしょう。
しかし、「思ったよりもたくさん費用がかかってしまった」場合、カードローンのように追加で借り入れることができません。資金不足の場合には、新たな借り入れなどの資金調達手段を考える必要があります。
無理なく返済できる、必要十分な資金を確保するために
フリーローンを利用する場合は、「いくら借り入れるか」を慎重に検討しましょう。必要資金はなるべく正確に見積もって、過不足のないようにしたいですね。
たとえば、資金使途が「買い物」であれば、事前にどんなものを買うか検討し、お店から見積りをもらっておくことも可能ですよね。できるだけ正確な必要金額がわかっていれば、適切な借入希望金額を設定することができます。
しかし、資金使途によっては、必要資金の見積りが難しい場合もあります。たとえば引っ越し費用の場合、見積りをもらっていても、追加料金が発生することがあります。見積り時と比べて、運ぶ荷物の量や条件が変わっていたり、不用品が発生して処理費用がかかったり。新居に購入すべきものに後から気づいて、慌てて購入することもあるかもしれません。自費診療で高額な歯科治療を受ける場合なども、歯の状態によっては見積りよりも治療費がかかる場合があるようです。そういった追加費用の発生も考えられる使途の場合は、借入金額は多めにしておいたほうが資金不足に慌てなくてすむでしょう。
なお、借入金額よりも実際にかかった金額が少なかった場合は、繰り上げ返済を行って利息負担を減らしましょう。ローン選びの際は、繰り上げ返済の手数料もチェックポイントになりますね。
「ちょっと多め」の「ちょっと」に注意
借入金額を検討する際、特に「ちょっと多め」の借り入れを検討する場合には、シミュレーションを行って返済に無理のない金額かどうかを確認しましょう。家計に無理のない毎月返済額はいくらでしょう?毎月返済額をその金額にした場合、返済期間はどれくらいになるでしょう?
下表は、金利5%で100万円、105万円借り入れた場合を試算したものです。「返済期間は5年(60か月)くらいかな」と試算してみた毎月返済額は、100万円借り入れた場合でも18,871円と、ちょっと家計の負担になりそう。では、毎月返済額を10,000円程度に抑えたい場合はどうなるかと試算すると、100万円借り入れた場合の返済期間は129カ月と10年以上かかることがわかりました。また、ちょっと多めにと借入金額を105万円に増やした場合、返済期間は137か月と、100万円を借り入れた場合に比べて返済期間が8か月長くなります。
借入金額 | 金利 | 返済期間 | 毎月返済額 | 返済総額 |
100万円 | 5% | 60か月 | 18,871円 | 1,132,260円 |
105万円 | 60か月 | 19,815円 | 1,188,900円 | |
100万円 | 129か月 | 10,037円 | 1,294,773円 | |
105万円 | 137か月 | 10,074円 | 1,380,138円 |
イー・ローン フリーローンのかんたん返済額シミュレーション にて筆者試算
このように、借入金額を決める際には、必要金額を見積もると同時に、毎月返済可能な金額をもとにシミュレーションを行って、無理のない返済プランを検討しましょう。借入金額を「ちょっと」増やすとどれくらい返済計画が変わるのかも確かめておきましょう。
また、借入金額が大きい場合、「ちょっと」の幅も大きくなりがちなので要注意。もとの借入希望金額が「10万円」なら「ちょっと」の上乗せ金額は数万円と考えても、借入希望金額100万円の場合の上乗せ金額は10万円単位で考えてしまったりしませんか?なるべく正確に必要な費用と追加費用を見積もって、安易に借りすぎることのないようにしましょう。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。
大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。
※執筆日:2023年01月04日