第1005回

住宅ローンの繰り上げ返済にはどんな方法がある?

住宅ローンの繰り上げ返済を検討しています。繰り上げ返済の種類やメリット、注意点などを教えて下さい。(40歳 会社員)
繰り上げ返済には、「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。どちらを選べばいいかは家計の状況などにより異なりますので、特徴を理解した上で選択しましょう。また、繰り上げ返済にはメリットだけでなく注意点もありますので、よく確認してから実行しましょう。

繰り上げ返済の2つのタイプ

繰り上げ返済とは、月々の返済やボーナス時の返済とは別に、借入残高の一部または全部を返済することです。繰り上げ返済した資金は全額が元本の返済に充てられるため、効果的に総支払利息を軽減することができます。

繰り上げ返済には「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があります。返済期間短縮型とは、毎月の返済額は変えずに返済期間を短縮する方法です。返済額軽減型は、借入期間は変えずに毎月の返済額を軽減する方法です。繰り上げ返済の効果を下記の例で見てみましょう。

【例】借入元金:3,000万円、借入期間:35年、金利:2%、毎月返済額:99,378円

100万円の繰り上げ返済を2年後にした場合と10年後にした場合の比較
  2年後 10年後
返済期間短縮型 毎月返済額 99,378円(変わらず) 99,378円(変わらず)
返済期間 33年5ヶ月(1年7ヶ月短縮) 33年8ヶ月(1年4ヶ月短縮)
利息軽減額 約90.5万円減 約62.8万円減
返済額軽減型 毎月返済額 95,927円(3,451円減) 95,140円(4,238円減)
返済期間 35年(変わらず) 35年(変わらず)
利息軽減額 約36.7万円減 約27.2万円減

同じ金額を繰り上げ返済する場合、返済期間短縮型の方が利息軽減効果は大きくなります。また、繰り上げ返済の時期が早いほど利息軽減効果は大きくなります。利息軽減効果を重要視するのであれば返済期間短縮型の方がメリットは大きいですが、支出が増えたり収入が減ったりした場合に「とにかく毎月の返済負担を軽減したい」など、返済額軽減型の方が適しているケースもありますので、ニーズに合わせて上手に使い分けるとよいでしょう。

繰り上げ返済の注意点

繰り上げ返済はメリットばかりではありません。注意しておきたい点を確認しましょう。

1点目は、住宅ローン控除額が減ってしまう場合がある点です。住宅ローン控除とは、年末のローン残高により所得税や住民税から控除(減額)される制度です。しかし、繰り上げ返済により年末のローン残高が減った場合、住宅ローン控除額も減ることになります。

2点目は、団体信用生命保険(団信)の保障額が減少する点です。団信に加入しておけば、住宅ローンの契約者に万一のことがあった場合でも、保険により住宅ローンが完済されます。例えば住宅ローン残高が2,500万円、貯蓄が500万円ある契約者が亡くなった場合、住宅ローン残高2,500万円が団信により完済され、手元には500万円が残ります。一方、この500万円で繰り上げ返済をした後に契約者が亡くなった場合、住宅ローン残高2,000万円が完済され、手元の貯蓄は0円になります。

3点目は、手元の現金が減ってしまう点です。繰り上げ返済の利息軽減効果は魅力的ですが、手元の現金をすべて繰り上げ返済に充ててしまい、お子様の教育資金や車の購入資金、リフォーム資金などが不足して、住宅ローンよりも高い金利で借り入れをしなければならなくなってしまっては本末転倒です。繰り上げ返済をする際には、まずはライフプランを立てて、手元資金のうちいくらを繰り上げ返済に充てるのかを十分に検討しましょう。

4点目は、繰り上げ返済には手数料がかかる場合がある点です。繰り上げ返済の手数料や最低返済額などは金融機関により異なります。すでに住宅ローン返済中の方は繰り上げ返済の条件をしっかり確認してから行いましょう。これから住宅ローンを契約される方は、繰り上げ返済の手数料などの条件もよく比較して住宅ローンを選ぶことをおすすめします。

【参考リンク】

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宮野 真弓 (みやの まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。

大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。

※執筆日:2022年12月06日