第989回
障がいのある学生も大学進学は可能です
- 息子には視覚障がいがあり、現在は盲学校の高等部に通っています。卒業後の進路として、大学進学を希望しています。障がいがあっても大学生活を送ることは可能でしょうか?(Sさん・会社員45歳)
- 学校によっても差はありますが、大学では障がいのある学生が通いやすくなるための様々な配慮がされています。また、奨学金も利用しやすくなっています。
障がいがあっても大学進学はできる!
全国障がい学生支援センターが大学に行ったアンケート調査によると、回答があった381校のうち、301校に障がい者が在籍し、前回調査に続き総数1万人を超えています。1校当たり平均38人で、もはや特別なことではなくなっています。
障がい者を受け入れている大学の中には、例えば試験時間を健常者より長めにとるなど配慮があるところも。視覚障がいや聴覚障がい、肢体障がい、発達障がいなど、障がいの内容によって必要な支援は異なりますが、例えば視覚障がいなら点字や拡大文字の試験が用意されている大学もあります。また、入学後に必要な支援が準備されている大学もあります。
個別の大学の事例で見てみましょう。
筑波大学
学群・学類の説明会と並行して「障がい学生支援に関する説明会・個別相談会」を開催。修学中も、「ピア・チューター(学習補助者)制度」があり、障がいの種類や程度などに応じて、修学上必要な支援を行っています。また、障がい学生やピア・チューター、担当教職員や障がい学生の担任などによる懇談会も定期的に開かれ、情報の共有や意見交換を行っています。
法政大学
面談に基づき、障がいのある学生が他の学生と同レベルで授業を受講できるよう支援を行っています。聴覚障がいならノート(パソコン)テイクやビデオなどの教材の音声の文字起こしなど、視覚障がいならテキストのデータ化・点訳、教科書やレジュメの対面朗読、肢体障がいで移動が困難な場合は介助者の派遣やノート作成などの支援も。発達障がいなら授業の録音やPC筆記、板書の写真撮影等を許可し、受講しやすい座席を確保。
奨学金制度はどうなっている?
障がいの有無にかかわらず一般の奨学金に応募することはできますが、下記のような配慮のある制度も利用が可能です。
日本学生支援機構
採用時と返還時に下記のような配慮がなされ、利用しやすくなっています。
貸与奨学金採用時の配慮 | ・家計基準の判定で、年収から一定額を控除(大学院除く) |
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・「所得連動返還型無利子奨学金」制度等の判定で、年収から99万円を控除 | |
・申込者が障がい者の場合、第一種奨学金・併用貸与奨学金の学力基準を緩和(大学院除く) | |
・申込者が障がい者か世帯に障がい者・長期療養者がいる場合、収入基準額を緩和(大学院除く) | |
・肢体不自由者など学修に時間を要する者は、学則上の修業年限まで貸与対象(第二種奨学金のみ) | |
返還時の配慮 | ・願出により返還期限を猶予(1年ごとに願出。当該事由が継続する期間) |
・1/2または1/3に減額して返還し、返還期間を延長(1回の願出で12か月まで。延長も可。通算で最長15年) | |
・返還者本人が精神・身体の障がいで労働能力を喪失または高度の制限がある場合、願出により返還未済額の全額または一部を免除 |
(日本学生支援機構サイト情報より作成)
その他の奨学金の例
障がいのある学生を対象にした民間の給付型奨学金もあります。
- 大学女性協会:大学学部あるいは大学院に在籍1年以上の、身体に障がいのある女子大学生及び大学院生の奨学金(社会福祉奨学金)。学部生10万円、大学院生20万円。
- ヤマト福祉財団:国内4年制大学に通学(または入学内定)している障がいのある方(障がい者手帳保有者)向け。月5万円。
- CWAJ:身体障がい等級1~6級までの視覚障がい者で、国内の4年制大学の学生または海外の大学等へ進学する学生を対象にした奨学金。150万円。
障がいのある学生を対象にした給付型奨学金は限られるものの、今回紹介した制度以外にもあると思われます。日本学生支援機構の奨学金も上手に活用したいものです。その他のお金を準備する手段として民間金融機関の教育ローンもあります。奨学金に比べ借り入れるタイミングに柔軟性がありますので、合格直後にまとまった支払いが間に合わない場合などは、教育ローンを利用するのも一法です。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。
20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。
※執筆日:2022年08月16日