第487回
推薦入試やAO入試で合格!入学金などはいつ必要?
- 娘がかねてから希望する私立大学のAO入試を受け、合格しました。親としては嬉しい反面、入学金などまとまったお金を予定より早く準備しなければならないことに頭を抱えています。奨学金などを入学前に利用することは可能でしょうか?(S.T 40代 会社員)
- 奨学金制度の代表格ともいえる「日本学生支援機構」では、基本的に奨学金を入学前に利用することができません。推薦入試やAO入試などの場合、一般入試よりも早く合格が確定する安心感がありますが、入学金などの教育費用も前倒しで必要となります。学資保険や預貯金の満期日に注意し、不足しそうな場合は教育ローンなどの活用も検討しましょう。
推薦入試・AO 入試ってどんなもの?
暑い夏が終わり、来春の受験を控える高校3年生やその保護者にとっては、最後の追込みに拍車がかかる時期になってきました。そんな中、推薦入試やAO 入試を選択した人にとっては、一般入試より前に試験、合格発表などの時期がやってきます。
「推薦入試」は、大学が高校から提出された推薦書を見て入学の可否を決定するもので、指定校推薦、学校推薦、自己推薦などいくつかの種類があります。一方、学力試験が課されず、小論文や面接など、さまざまな視点から大学にふさわしい人物かどうかを見極めて選出される「AO(アドミッション・オフィス)入試」も推薦に近いものといえるでしょう。
一般入試よりも早いとはいえ、推薦入試の出願時期や試験日、合格発表日等は各大学によってバラバラ。原則としては、文部科学省からの通知により、入学願書受付が11月1日以降、合格発表は一般入試の10日前までとなっています。
またAO入試の場合、大学ごとに試験・選抜の方法や時期が大きく異なります。だいたい入学願書受付は8月1日以降ですが、早いところでは高校3年生の春頃からエントリー受付の場合もあるため、志望する大学のAO入試の時期について早めに調べておいた方がよさそうです。
推薦入試・AO 入試の入学金はいつまでに準備する?
今や、推薦入試は一般入試に次ぐ規模の選抜方式。全体の90%以上の大学で実施されています。推薦入試で大学へ入学した人は、国公立大学では約10~20%程度ですが、私立大学では40%を超えており、推薦入試やAO入試による入学者も増加傾向にあります。
しかも、一般入試とは違って多くの大学では、「出願者は、合格した場合は必ず入学する者に限る」専願制の入試となっています。(ただし最近は、他大学との併願も可能な併願制も増えてきている)。
このように、推薦入試は、出願するうえで制約があること。原則として第1志望校に限った入試であることなどを考慮しなければならないものの、これらを差し引いても、希望する大学に早く合格が確定するというのは受験生やそのご家族によっては何よりの喜びでしょう。そのうえ推薦・AO 入試で合格すれば、すべり止めのための併願受験など、受験費用を節約することも可能です。
まさに受験生や保護者にとっても、一石二鳥といえそうですが、注意しておきたいのは、入学金などまとまったお金の支払い時期も前倒しでやってくるという点。ほとんどの大学では、入学金、授業料など定められた「初年度納入額」を合格通知から一定期間内に納めなければなりません。手続きの期限は、合格発表から数日後~2週間程度以内。つまり合格の早い推薦入試やAO 入試は、一般入試と比べて、お金が必要になる時期が数か月早いケースもあるということです。
【参考リンク】
入学金などが足りない場合は?
学費の納入方法としては、「一括方式」、「2段階方式」、「延納方式」、「返還方式」などがあります(下図参照のこと)。
一括方式 | 入学手続き時に入学時最小納入金*を一括で納入する方式 |
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2段階方式 | 一次の入学手続期間内に入学金またはその相当額を納め、二次の手続き締切日までに入学時最小限納入金の残金を納入する方式 |
延納方式 | 基本的には2段階方式と同じで、大学が定める所定の期日までに申し出れば、入学金以外の授業料などを延納できる方式 |
返還方式 | 入学時最小納入金を納入し、返還手続き締切日までに辞退を申し出れば一部(ほとんどの場合は入学金以外)が返還される |
* 入学手続きに必要な最小限の費用のこと
一般入試にしろ、推薦入試・AO入試にしろ、トータルの初年度納入金の額は変わりませんが、やはり問題は支払い時期が早まること。とくに、学費や生活費などを奨学金でまかなおうと考えている場合、初回の奨学金が振り込まれるのは、入学後の6月か7月(高校在学中に行う「予約採用」であれば入学月から受け取ることが可能。ただし早くても4月中旬以降)の振り込みになります。どう考えても入学金に利用することはできません。
教育資金を学資保険や定期預貯金で準備している場合は、満期日の設定がポイントとなりますし、不足する場合は何らかの手立てを講じておく必要があるでしょう。
教育資金を「借りる」となれば、まずは日本政策金融公庫の「国の教育ローン」など低利でまとまった融資や受けられる公的ローンを中心に検討されることをお勧めします。
また、労働金庫(ろうきん)の「日本学生支援機構奨学生入学金ローン」は、日本学生支援機構の「入学時特別増額貸与奨学金」に採用された方に同額(50万円まで)を入学前に貸し付けるという教育ローンです。
これらが利用できない、またはそれでも不足するという場合は、銀行やノンバンク系など民間の教育ローンもあります。金利優遇などのキャンペーンを上手に活用しましょう。
このほか、大学によっては、入学金免除や奨学金・奨励金給付など、大学独自で条件・基準を設けた制度がある場合もありますし、学費の分納や延納に対応する学校が増えています。いずれにせよ、教育費に限らず、お金のことは困ったら早めに相談するというのは鉄則だということをお忘れなく。