第1052回

続く円安傾向。将来の留学を予定しているなら資金計画の見直しを!

高校生の子どもが大学進学後に海外留学を希望しています。さまざまな情報を集めているところですが、この先も円安傾向が続くようだと、留学費用に影響が出そうで不安を感じています。資金不足のときに、どのような対応をすればいいか教えてください。(東京都・Mさん)
留学先の国や留学の期間にもよりますが、このまま円安傾向が続くと考えると、余裕のある資金計画を立てておく必要があります。お子様が高校生であれば、大学進学費用と併せて、留学費用もしっかりと貯蓄して備えましょう。給付型の奨学金など各種制度の活用や教育ローンの利用を検討するなど、事前に調べておくことも必要でしょう。

直近2年間で、米ドル/円の為替レートは約32%の円安に

2022年3月ごろから米ドル/円の為替レートの円安傾向が始まり、2年前と比較すると約32%(※)もの円安となっています。留学のタイミングで円安がさらに進んでいれば、それだけ負担は重くなってくるでしょう。また、留学先の物価によっては、留学後の生活費も圧迫されることになります。

(※)2021年11月1日終値113.98円、2023年11月1日終値150.95円

日本学生支援機構の調査によると、1年未満の留学経験者の総費用は100万円未満が約半数を占め、1年以上の留学経験者の総費用は100万円以上200万円未満が約2割、200万円以上は約4割という結果になっています。

実際には、留学先の国や期間によっても異なります。語学留学などの短期留学であれば1週間で20万円程度と言われていますが、大学留学で2年制のカレッジの場合、150万~300万円、4年制では200万~400万円とも言われます。

留学費用の内訳は授業料、滞在費、食費などの生活費のほか、留学に伴う諸費用(パスポート・ビザ申請、エージェント費用)などが挙げられます。特に授業料と滞在費が高額になるため、円安傾向が続けば、予定していた資金計画では不足する可能性も出てきます。

大学進学費用と並行して留学費用の準備をしていくには、家計支出を見直してムダをなくし、貯蓄のスピードを上げていくほかありません。お子様の希望を叶えるためにも、円安に備えた資金計画を再度チェックしてください。

給付型の奨学金や企業、財団法人などの奨学金制度をチェックしておく

準備した費用では不足するという場合に備え、今から情報を集めておくことも大事です。文部科学省では、留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」を推進しています。このキャンペーンでは民間企業などの協力を得て、「トビタテ!留学JAPAN新・日本代表プログラム」を展開しています。また、国費による海外留学支援制度によって、給付型奨学金を用意しています。

日本学生支援機構の海外留学支援制度では、例えば2023年度の学部学位取得型の場合、4年にわたり、月額5万9,000円~11万8,000円の奨学金を給付(返済不要)。授業料は年度250万円を上限(予算の状況に応じ300 万円まで可能)とする実費額が給付されます。さらに、臨時の渡航⽀援⾦として⽀援開始時に16 万円が給付されます。採用人数は非常に少ないですが、こうした国の制度を活用することも検討しておくといいでしょう。

奨学金については、大学独自のもの、県をはじめとする自治体のもの、民間企業、財団法人など、さまざまな制度があります。お子様の希望を確認しつつ、一緒に奨学金について調べ、応募、申込みの準備をしておくようにしましょう。

民間金融機関の教育ローンを利用するなら借り入れの条件を確認しておく

奨学金などは必ず受けられるというものではありませんので、万が一、留学費用が不足するようであれば、民間の教育ローンの利用も検討しましょう。

民間の教育ローンは、多くの金融機関で取り扱いがあり、資金使途が教育費に限られていることから金利は低めに設定されています。また、在学期間は元金の支払を据え置く対応が可能な商品が多数あります。

申込みから融資までは比較的短期間で行われますので、過剰に心配することはありません。ただし、海外留学にも使える教育ローンとなると、取り扱いのある金融機関が限られてきます。申込み時に留学に関する資料の提出を求められることもあります。

また、地方銀行の場合は、申込者(保護者など)が銀行の営業エリアに在住していることなどの条件も加わりますので、民間の教育ローンを利用する場合も、事前に確認しておくといいでしょう。

考え方次第ですが、海外留学費用は自己資金でまかない、国内の大学にかかる費用は一般的な教育ローンを利用するという方法もあるでしょう。

いずれにしても、海外留学は為替レートに左右されますので、現在予定している費用より、1割、2割増えても対応できる準備だけはしておくようにしましょう。

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私が書きました

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伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2023年11月07日