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第889回

子供の教育費は出産前から考えるべき?

1人目の子供の誕生を来年に控え、将来の子供の養育費や教育費について考える必要があると思っています。子供1人に人並みの教育を授けるには、いくら程度かかるのでしょうか?また、どのようにして準備をすればよいでしょうか?(30代 女性 会社員)
子供の教育費は、夫婦の老後資金、住宅資金とともに人生の3大資金と言われます。多額な資金が必要な上、他の2つの資金と準備や支出の時期が重なることもあるため、優先順位やバランスに配慮しながら、計画的に準備をする必要があります。まずは、子供が自立するまでにいくらの教育費がかかるかをイメージし、今後どのようにして準備するかを考えてみましょう。

子供が自立するまでにかかる教育費は?

教育費は、子供が生まれることがわかった段階で、お金がいつ、何に、いくらかかるかがおおよそわかります。したがって、教育費の準備は生まれる前からスタートすると考えてもいいでしょう。また、計画しやすい資金ということもできます。子供の教育費を検討することは、出産後も共働きを続けるか、また、夫婦それぞれが今後どんな働き方をするかを決めることにもつながります。

子供が経済的に自立するまでにかかる教育費は、以下の通りです。毎年、いくら程度必要かをイメージしましょう。

なお、子供が2人なら必要な時期はずれるものの合計金額は2倍、3人なら3倍かかることになります。

幼稚園、小学校、中学校、高校の学習費(単位:円)

幼稚園 3歳 4歳 5歳 合計
公立 学習費総額 188,342 217,121 243,625 649,088
学校教育費 120,727 115,978 124,578 361,283
学校給食費 20,733 18,769 18,496 57,998
学校外活動費 46,882 82,374 100,551 229,807
私立 学習費総額 551,652 491,275 541,850 1,584,777
学校教育費 397,035 286,945 314,736 998,716
学校給食費 30,291 31,130 31,174 92,595
学校外活動費 124,326 173,200 195,940 493,466
小学校 区分 第1学年 第2学年 第3学年 第4学年 第5学年 第6学年 合計
公立 学習費総額 350,860 263,310 292,950 309,617 339,132 370,940 1,926,809
学校教育費 109,753 36,477 46,674 45,661 56,358 84,511 379,434
学校給食費 43,105 43,667 43,425 44,217 43,927 43,995 262,336
学校外活動費 198,002 183,166 202,851 219,739 238,847 242,434 1,285,039
私立 学習費総額 1,892,002 1,366,148 1,415,910 1,497,087 1,630,684 1,790,314 9,592,145
学校教育費 1,271,034 787,650 799,512 821,494 854,980 883,759 5,418,429
学校給食費 47,970 47,812 48,799 47,548 47,987 45,684 285,800
学校外活動費 572,998 530,686 567,599 628,045 727,717 860,871 3,887,916
中学校 区分 第1学年 第2学年 第3学年 合計
公立 学習費総額 456,582 436,183 569,348 1,462,113
学校教育費 194,599 105,365 119,360 419,324
学校給食費 43,786 43,305 41,801 128,892
学校外活動費 218,197 287,513 408,187 913,897
私立 学習費総額 1,624,661 1,230,122 1,362,389 4,217,172
学校教育費 1,339,128 899,756 972,986 3,211,870
学校給食費 3,939 3,891 3,361 11,191
学校外活動費 281,594 326,475 386,042 994,111
高校 区分 第1学年 第2学年 第3学年 合計
公立 学習費総額 507,980 460,470 403,622 1,372,072
学校教育費 370,374 299,848 171,000 841,222
学校給食費 -
学校外活動費 137,606 160,622 232,622 530,850
私立 学習費総額 1,160,016 893,127 851,087 2,904,230
学校教育費 956,333 660,825 532,525 2,149,683
学校給食費 -
学校外活動費 203,683 232,302 318,562 754,547

「平成30年度(2018年度)子供の教育費調査(文部科学省)」より

大学の初年度納付金、および、在学中にかかる納付金の目安(単位:円)

区分 初年度納付額 その他の年の
在学中納付額/年
在学年数 合計額
国立大 817,800 535,800 4 2,425,200
公立大 931,125 538,734 2,547,327
私立大文系 1,166,922 936,925 3,977,697
私立大理系 1,544,962 1,290,653 5,416,921
私立大医歯薬系 4,822,395 3,749,312 6 23,568,955

※国立大学の文部科学省令による標準額
※公立大学は、「2019年度学生納付金調査」(文部科学省)。公立大昼間部の平均額。
 初年度納付額の中の入学料は地域外入学者の平均額として算出。
※私立大学は、「2019年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査」(文部科学省)
 私立大昼間部の平均額。

高校まではその年の収入から支出し、大学資金の一部は長期的に準備するのが原則

教育費の支出については、高校を卒業するまでは、その年の世帯収入の中から支出するのが原則です。なぜなら、毎年継続的に必要な金額を、時間をかけて長期的に準備するのは難しいからです。したがって、将来の世帯収入の推移を予想しつつ、今後の子供の数、住宅にかけるお金、夫婦の老後資金の準備、親からの資金援助、教育に関する行政の助成制度なども踏まえ、子供に授ける教育を公立学校中心にするか、私立学校中心にするかなどを検討することになるでしょう。

一方、大学では、比較的短期間に多額の資金が必要です。そのため、大学で必要な資金の一部を、早くから計画的に準備するようにしましょう。子供の誕生後に、大学入学前までの時期をゴールに定めて、毎月積み立て貯蓄をしたり、学資保険に加入したりするのが一般的です。

なお、高校まででも、上級学校に進学する初年度は、比較的まとまった金額が必要になることがあります。その額の一部を計画的に準備することを考えてもよいでしょう。また、中学校までは公立学校に通わせ、高校から私立学校に通わせようと考える場合、高校で必要な資金の一部を高校入学前の時期をゴールに定めて、計画的に準備をするという考え方もあります。

一時的な資金は、教育ローンも選択肢の一つ!ただし、返済のメドをつけた上で活用を!

教育資金の中でも、比較的まとまった額が必要になる時期に手元資金が不足する場合や、突発的な事情で教育資金以外の支出が増えたために教育資金が不足する場合などは、教育ローンの活用を検討してもよいでしょう。

ただ、教育ローンを活用する際は、資金不足を一時的にカバーするためだけに限定することが重要です。一時的な借り入れであれば、返済のメドをあらかじめつけやすいでしょう。毎年不足する教育費を補うために教育ローンに頼っていては、なかなか返済が進みません。そのような場合は、他の支出や収入も含めた家計全般の根本的な見直しをする必要があります。

当然のことながら、教育ローンを検討する場合は、現在の取引金融機関のものに安易に決めるのではなく、複数の金融機関、複数の商品をじっくり比較して、自分にとってできるだけ条件の有利なものを選択するようにしましょう。

【参考リンク】

私が書きました

中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2020年08月24日