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第295回

受験期の教育費が足りないときは

高校2年の息子と中学3年の娘がいます。受験に備えて二人とも塾に通っており、家計が苦しくなってきてしまいました。これから受験費用もかかってきますが、進学資金に備えて加入している子ども保険を解約したほうがよいのか、ローンを借りたほうがよいのか、迷っています。
子ども保険を解約した場合、ローンを借りた場合をシミュレーションして比較検討しましょう。

年収の3分の1が教育費

日本政策金融公庫が「国の教育ローン」の利用者に対して行ったアンケート結果によると、世帯年収に占める「在学費用(小学校以上に在学中の子ども全員にかかる費用の合計)」の割合は、平均34.1%、つまり年収の3分の1が教育費となっているそうです。また、高校入学から大学卒業までにかかる費用は子ども一人当たり1023.6万円にものぼります(表1,2参照)。

教育費負担がこれほど重いと、お子様の進学のために子ども保険などに加入して準備しているご家庭でも、実際の進学資金には足りなかったり、進学以前の塾費用や受験費用が家計を圧迫したりする場合も多いようです。

<表1:入学費用~子ども一人当たり~>

  学校納付金 受験費用 入学しなかった学校への納付金 合計
高校(平均) 39.6 8.0 1.3 48.9
国公立高校 23.5 9.8 2.4 35.7
私立高校 43.9 7.5 1.0 52.4
大学(平均) 56.0 23.6 6.0 95.6
国公立大学 45.7 24.7 17.6 88.0
私立大学 70.1 23.3 3.6 97.0

単位:万円


<表2:在学費用~子ども一人当たり・1年間の見込み額>

  学校教育費 家庭教育費 合計
高校(平均) 81.0 11.5 92.5
国公立高校 50.8 13.6 64.4
私立高校 90.8 10.9 101.7
大学(平均) 145.4 5.0 150.4
国公立大学 99.7 5.2 104.9
私立大学 154.7 5.0 159.7

単位:万円

表1、表2とも日本政策金融公庫 「教育費負担の実態調査(勤労者世帯)」平成20年より

まず、進学準備資金と家計の見直しを

では、受験期のお子様のいるご家庭では教育費をどう確保すればよいのでしょうか。家計のやりくりで教育費の捻出をすることが難しくなってきたら、まずは子ども保険や貯蓄などの進学準備資金をチェックしてみましょう。

子ども保険や積立貯蓄を中途解約した場合の受取額と、満期金との差を確認しましょう。定期預金の場合、中途解約すると中途解約利率が適用されるので満期時よりも受取額は少なくなりますが、元本割れすることはありません。しかし、子ども保険や養老保険などの貯蓄型の保険は、中途解約した場合、払込保険料総額よりも受取額が少ないこともありえると考えられます。加入時期・加入期間、契約時の年齢等の条件で解約返戻金(中途解約した場合に戻ってくるお金)は異なるので、保険会社で計算してもらいましょう。

また、進学準備資金を中途解約した場合、受験後進学先が決まったときに必要になる「進学資金」をどうするのかも考えておかなければなりません。進学時期になれば資金のあてがあるのなら問題ありませんが、そうでなければ、あらためて進学資金の準備をスタートし、将来は奨学金や教育ローンの利用も検討することになるかもしれません。進学期も見越して検討して、子ども保険を解約しても、元本割れなどのデメリットが少なければ、解約返戻金を塾費用や受験費用などに当てるのもよいでしょう。

もちろん、家計の見直しも必要です。実際、先のアンケート結果でも教育費の捻出方法として「教育費以外の支出を削っている」ケースが61.6%と最も高く、レジャー費や食費、衣類の購入費などが節約の対象となっているそうです。そのほか、保険料や電話代、インターネット代なども見直し余地の多い支出なので見直してみましょう。

ローンを利用するなら「教育ローン」を

進学準備資金は満期までとっておきたい、取り崩すと大きく元本割れする、といった場合などは、教育ローンの利用も考えられます。

教育ローンは、学費や進学資金などに利用目的を限定した目的別ローンで、キャッシングやフリーローンに比べて低金利なので、教育資金を借りるのであれば利用したいところです。キャッシング等に比べると審査期間が長いイメージがありますが、審査期間が「1時間」「即日」など、キャッシングなどと遜色なく短い商品・金融機関もあり、来店不要で手続きできる商品もあります。

公的な教育ローンとしては日本政策金融公庫の『国の教育ローン』が代表的で、銀行やその他の民間金融機関も多くの教育ローンを用意しています。 ただし、目的が「教育」といっても、具体的な使い道はローン商品によってさまざまです。進学先が短大・大学以上の学校に限られるもの、幼稚園や小学校から利用できるもの、学校納入金のみが対象のもの、それ以外にも利用可能なものなどさまざまあるので、対象となるお子様や使い道に応じて選びましょう。

また、融資条件は連帯保証人が必要なもの、保証人不要で保証会社の保証を受けられることが条件のものなど商品によって異なります。保証会社の保証を受ける場合は、保証料が利息に含まれている場合と、別途かかる場合があります。金利だけでなく、保証料などのコストも含めて比較検討するようにしましょう。

そのほか、すぐに返済がはじまるもの、在学中は元金据置で利息のみ返済も可能なものなど返済方法もチェックしておきたいポイントです。早く返済したほうが利息負担は軽くなることは念頭に置いた上で、家計に無理のない返済が可能な商品を選びましょう。2008年12月1日より、『みずほ教育ローン』金利優遇キャンペーンが始まりました。キャンペーン期間中に融資実行された場合は、店頭表示金利より年2.3%の金利優遇が受けられます。メガバンクなので、全国対応が可能ですし、金利優遇の条件などがシンプルです。先に触れた『国の教育ローン』と、『みずほ教育ローン』、そして借入れ可能な地域の教育ローンの3種類で比較検討してみるのも一つの方法です。

ただし、進学後さらに教育費負担は重くなることが予想されるので、無理な借り入れは禁物です。また、お子様の進路によって予想以上にお金がかかる場合もあります。無理な金額を借り入れなければ教育費が捻出できないのであれば、親としてはつらいかもしれませんが、支出面(進学先や塾等)の再検討も必要です。

なお、最近は独自の奨学金制度や学費の貸付制度がある大学等も増えています。教育資金や進学先を検討する際には、あわせてチェックしておきましょう。

私が書きました

大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2008年12月10日