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第1086回

東京都と大阪府で、所得制限なしの高校授業料無償化がスタート

東京や大阪で、収入に関わらず、高校の授業料が無償化されたと聞きました。わが子は小学生で他県に住んでいますが、先々転勤の可能性もあるので興味があります。対象や仕組みを教えてください。(福岡県Mさん)
国からの支援金に自治体からの独自支援を上乗せする形で、東京都や大阪府で保護者の所得額に関わらない高校の「実質授業料無償化」がスタートしています。自治体によって、支援の仕組みや対象は異なり、国・自治体両方で手続きすることが必要なことに注意しましょう。

「実質授業用無償化」のベースは、国の就学支援金制度

この春、東京や大阪の「高校の実質授業料無償化」が注目されました。 「実質無償化」は、国の就学支援金制度がベースに、自治体からの独自支援を上乗せすることで実現される仕組みなので、まずは、国の制度を確認してみましょう。

国の「高等学校等就学支援金制度」とは、所得等要件を満たす世帯の生徒を対象として授業料を支援する制度です。 2024年7月現在の支援内容として、所得等の要件を満たしている世帯の生徒が高校に通う場合、国の就学支援金制度から、公立高校の場合は年間11万8,800円、私立高校に通う場合は年間39万6,000円を限度に支援が受けられます。

所得等の要件はその家庭の収入のある保護者等の人数や家族構成によって異なりますが、例えば、両親と高校生1人の家庭で両親の一方に収入がある場合、世帯年収が910万円以上であると、支援対象から外れることになります。

国の支援が受けられれば、公立高校の授業料は実質無償になります。

しかし、私立高校の場合は国からの支援だけでは、授業料全額をカバーすることはできないので、差額を支払う必要があります。

また、所得要件を満たしていなければ、支援の対象外で、公立・私立どちらの場合でも無償とはなりません。

これまでも、国の支援金制度に上乗せする形で、独自の支援制度を設けている自治体があり、授業料負担の重い家庭への追加支援は行われていましたが、その場合も、所得等の要件を満たす必要がありました。

そんな中、2024年度からは、今までは無償化の対象とならなかった家庭も対象とする支援制度が東京都や大阪府でスタートしました。

具体的な内容を確認してみましょう。

東京都では、2024年度から、高校の実質授業料無償化

東京都では、保護者の所得額を問わない、公立・私立の高校授業料無償化が2024年からスタートしました。

公立高校の場合

公立高校の場合は、所得要件を満たせないために国の就学支援金の対象とならない家庭に対して、東京都が授業料を全額免除します。 授業料免除を受けるためには、「授業料通信教育受講料減免申請書」の提出が必要で、かつ、免除を受ける期間について、国の就学支援金の申請も行う必要があります。例えば、昨年度に国の就学支援金が認定されていた場合、4月~6月は手続不要で適用されます。7月~翌年6月分までは、7月に就学支援金の申請を行うことで適用されます。就学支援金が不認定となった場合には、速やかに「授業料通信教育受講料減免申請書」を提出する必要があります。

私立高校の場合

私立高校の場合は、国の「就学支援金」と東京都の「授業料軽減助成金」とを合わせて、都内私立高校平均授業料相当(全日制・定時制課程は年額484,000円、通信制課程は年額265,000円)を上限に助成が受けられます。国の就学支援金の所得制限の条件を満たせない家庭も都の授業料軽減助成金により同等の金額を受け取ることができるようになります。

国の就学支援金と東京都の授業料軽減助成金は異なる制度なので、それぞれの制度で申請が必要となりますが、国の就学支援金の所得制限を満たせない家庭は、東京都の授業料軽減助成金のみを申請します。

東京都の授業料軽減助成金の申請時期は、2024年6月20日(木曜日)~7月31日(水曜日)(全日制の場合)に、スマホやパソコンから申請します。申請の際には、連絡のためのメールアドレス、在籍している学校の情報、国の就学支援金の情報、住民票や所得を確認する書類、振込口座などの情報を入力します。

大阪府では、2024年度は高校3年生が無償化

大阪府では、2024年度は高校3年生から実質授業料無償化がスタートしました。制度は順次他学年に広がり、2026年度以降は全学年が対象となり、所得額に関わらず無償化されます。

公立高校の場合

公立高校の場合は、所得条件を満たせず、国の就学支援金が受けられない家庭を対象に、大阪府独自の制度として、授業料の無償化支援が行われます。 大阪府の無償化支援を受けるためには、国の就学支援金制度の申請が必要です。申請の結果、所得の条件を満たせずに、支援対象外となった期間の授業料のうち、2024年4月以降の授業料について、大阪府の授業料無償化制度で支援が受けられます。

私立高校の場合

私立高校の場合も、国の就学支援金が受けられない家庭も対象として、国の就学支援金と併せて大阪府の私立高等学校等授業料支援補助金(以下「授業料支援補助金」)を交付することにより授業料の無償化が行われます。2024年度の高校3年生から制度はスタートし、段階的に他学年に広げられ、2026年度以降は全学年が対象となり、所得額に関わらず無償化されます。

ただし、2024年度の高校3年生、2025年度の高校2年生と3年生については経過措置として、一部負担金が発生する場合があります。

大阪府の私立高校の授業料無償化
(2024年度の高校3年生、2025年度の高校2年生、3年生)
保護者の年収 授業料
63万円まで 63万円を超える分
910万円以上 無償 保護者が負担
800~910万円
590~800万円 無償
大阪府外の対象校は保護者が負担
590万円未満

大阪府 令和6年度以降に段階実施する授業料支援制度について より。表は筆者作成

その他の自治体にも広がる助成制度

収入などの条件はありますが、国の就学支援金制度に上乗せする形の自治体独自の支援金制度は、他の自治体にも広がっています。

たとえば、神奈川県の場合、私立高校進学者・在籍者に対して、国の就学支援金の上乗せとして県からの学費補助金の支援があり、年収700万円未満の世帯までは実質授業料無償となります。多子世帯の場合には支援基準が緩められ、年収910万円未満の世帯でも実質授業料無償になります。

京都府の場合は、国の支援金と合わせて、生活保護世帯には年額98万円、年収590万円未満世帯に対して65万円、年収590万円以上730万円未満世帯には26万4,000円、年収730万円以上910万円未満世帯には19万8,800円まで支援といった支援があり、兄弟が同時に在学した場合の上乗せ加算もあります。

また、高校にかかる費用に対する支援として、授業料ではなく、入学金や通学費用の支援を行う自治体もあります。

少子化が進む中、子育て世帯の負担を軽減し、子どもの学びを支援する制度は、今後も広がっていく可能性が高いでしょう。お子様の進路選択の際には、在籍中の中学校などからも情報提供があると思いますが、早めに、お住まいの地域で利用できる制度をあらためて確認しておくと、進路選択の幅も広がるのではないでしょうか。

【参考リンク】

私が書きました

大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。

大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。

※執筆日:2024年07月02日

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