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第1018回

今話題の「リスキリング」とは?

勤務先でデジタル化が進み、業務内容もこれまでと大きく変わりつつあるのを感じています。新聞や雑誌で「リスキリング」が必要と言われていますが、どんなものなのでしょうか。(Kさん 会社員 30歳)
リスキリングは、新しい仕事をするために必要な能力や技術を身につけることです。ダボス会議で話題となり、日本でも注目されていますので内容を確認してみましょう。

リスキリングとは?

2020年の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で「2030年までに10億人のリスキリングを目指す」という声明が発表され、世界的に注目されている「リスキリング(Reskilling)」。経済産業省は、リスキリングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進展する中、それに対応できる人材の育成が急がれており、近年リスキリングへの関心が高まっています。

これまではスキルを習得する方法として、職場で実務を行いながら知識を身につけるOJT(On-the-Job Training)や、職場を離れて行われる研修やセミナーなどのOFF-JT(Off-The-Job Training)が中心でしたが、これらはあくまで現在の仕事の延長上にあるスキルを身につけるためのものでした。それに対しリスキリングは、デジタル化やAIの進化による社会変化等に対応するための新しい技術やスキルを習得する方法といえます。

リカレントとどう違う?

リスキリングと似ている言葉にリカレント(recurrent)があります。リカレントは、反復や循環という意味ですので、退職して学ぶ、そしてまた就職するというように、働くことと学ぶことを繰り返すことを指します。また、働きながら学ぶことを含めた幅広い「学び直し」の意味でも使われるようです。

いずれにしても、社会に必要とされる新たなスキルを身につけていくという意味で、リスキリングもリカレントも共通しています。今後は、社会人になってもキャリアプランを立てて自分のキャリアを磨いていくことが必要な時代なのでしょう。

社会人の学び直しに活用できる教育訓練給付制度

リスキリングは、企業が主体となって進め、費用も企業が負担する場合が多いようです。しかし、社会の変化に対応するため自らの意思で新たなスキルを身に着につけて転職や収入アップにつなげるという選択肢もあるでしょう。

社会人が自ら学び直しのために資格取得学校や専門学校などに通う場合、費用面の問題が出てきます。まずは、教育訓練給付制度が利用できるかどうか確認すると良いでしょう。対象者の要件を満たし、厚生労働大臣の指定を受けた講座を修了すれば、その費用の一部が教育訓練給付金として給付されます。

教育訓練給付制度には、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3種類があり、対象者の条件や支給される給付金の割合も異なります。

労働者の中長期的キャリア形成のための教育訓練が対象である専門実践教育訓練給付金は、業務独占資格取得やデジタル関係の講座、大学・大学院・専門学校の講座が対象になっており、修了後、最大で受講費用の70%が支給されますので費用面の助けになるでしょう。

ただし、希望する講座が必ずしも給付金の支給対象であるとは限りませんし、対象の場合でも、はじめは自分で授業料を支払わなければなりませんので、預貯金を十分に確保しておく必要があります。大学や大学院にかかる費用は、国公立と私立で違いはありますが、年間で数十万円~百万円以上です。少しでも経済的負担を抑えるために、社会人でも利用できる奨学金や授業料減免制度の有無をチェックしてみると良いでしょう。

預貯金のみでは資金が不足する場合、社会人でも利用できる教育ローンを検討してみても良いでしょう。安定した収入があれば「国の教育ローン」や民間の金融機関の教育ローンも利用できます。なるべく低金利で利用できる金融機関を比較検討しましょう。

自分で新たなスキルを身につける場合、費用はかかりますが、将来的には収入アップや業務の幅の広がりが期待できます。中長期的な視野でしっかりとキャリアプランニングとマネープランニングを立ててみましょう。

【参考リンク】

私が書きました

福島 佳奈美 (ふくしま かなみ)

ファイナンシャルプランナー(CFPR)。

大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。

※執筆日:2023年03月10日