第1056回
今話題の「ライドシェア」とは?
- 最近、ニュースで耳にする「ライドシェア」が気になっています。海外では普及しているようですが、日本では利用できないのでしょうか。(兵庫県 Mさん)
- 日本では、ガソリン代・高速代等の実費を割り勘で負担するライドシェアは行われています。有償でのライドシェアは、一部地域を除き、「白タク」行為として禁じられていますが、見直す動きが出てきています。
目的地までのドライブをシェアする「ライドシェア」
相乗りを意味する「ライドシェア」は、「一般のドライバーが自家用車を使って他人を目的地まで運ぶ」サービスです。移動したい人は配車アプリに登録されている一般のドライバーを探し、条件が合えば、一般のドライバーの自家用車に「相乗り」して目的地に向かいます。タクシーの不足する地域などでも利用できるので、交通の不便な過疎地や観光地でも便利なサービスです。
アメリカや中国などの海外では、ドライバーが報酬を受け取る有償のライドシェアサービスが普及しています。一方、日本では有償のライドシェアサービスは認められていないため、金銭のやりとりをガソリン代や高速道路代等の実費に限定した、サービス自体は無償のライドシェアサービスが実施されています。
日本での有償のライドシェアは限定的
日本では、有償のライドシェアは原則として「白タク」行為として禁止されています。「白タク」とは、国の許可を受けずに白いナンバープレートの自家用車やレンタカーを使用して、有償で人を運ぶ車両をいいます。道路運送法で、他人を有償で運ぶ行為は、タクシーなどの緑ナンバーを付けた営業車両に限られているのです。
なお、自家用車での有償の旅客運送については全く認められていないわけではなく、道路運送法78条により、一定の条件を満たし、運輸支局等への登録した場合に「自家用有償旅客運送」が認められています。ただし、対象は、緊急時や、過疎地域などを対象とした「交通空白地有償運送」、一人での異動が困難な身体障害者や要介護者等を対象とした「福祉有償運送」に限定され、実施者も市町村やNPO団体等に限られます。利用者の料金は、
- 旅客の運送に要する燃料費や人件費等の実費の範囲内であると認められること。
- 合理的な方法により定められ、かつ、旅客にとって明確であること。
と定められており、近隣のタクシー運賃の1/2を目安とすることとされています。
また、「公共の福祉を確保するために止むを得ない場合」には、「国土交通大臣の許可を受けて、地域または期間を限定して運送」することも認められています。通学通園のために学校等が行う送迎や、福祉タクシー事業者と契約したヘルパー等による運送が対象となります。
移動手段に困る人の増加による、ライドシェア導入に向けた検討
このように、日本では対象を限定した有償ライドシェアは認められていますが、誰でも利用できる有償のライドシェアは認められていません。一般ドライバーの運転技量や自動車の整備状況、事故が起きた場合の保険、タクシー等の利用者の減少や利用料金の値下げ競争によるタクシー等の業界の経営不安、ライドシェア参入者の増加による交通渋滞など、便利なライドシェアサービスには課題もあります。
しかし近年、高齢化によって運転免許を返納した人や海外からの観光客の増加などで「移動したい人」が増えているのに対して、タクシー業界はドライバー不足で「運ぶ人」が足りなくなり、ライドシェアのニーズは高まってきているといえます。
最近は国会議員からもライドシェアについて声があがり、2023年11月20日には、岸田首相が衆院本会議で「年内をめどに方向性を出し、できるものから速やかに実行していきます」と方針を示しました。地域や時間帯を限定したライドシェアの実証実験のニュースなどを見ると、現在の法律の範囲内で行えるものから「有償のライドシェア」は拡がりそうです。
正しい情報を把握することが大切
有償のライドシェアについて、日本では議論の途中にある状況です。利用者としてライドシェアに関心がある方も、ドライバーとして参入に興味がある方も、誤った情報に流されて違法行為に加担してしまうことの無いよう気を付けましょう。
一方で、将来的にライドシェアを活用することでマイカーを持つ必要が無くなったり、「運ぶ人」になるためライドシェアに向いた車種に買い替えたりするなど、マイカーに対する考え方が大きく変わる可能性があります。今後の動向に注意しましょう。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。
大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。
※執筆日:2023年12月05日