第910回

運転資金に該当する資金使途は?

中小企業の経営者です。新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが減少し、不安定な経営状態です。利用できる給付金や助成金は申込んでいますが、事業の運転資金が不足しそうで不安です。(Kさん 埼玉県 50代)
先行き不透明な中、運転資金の資金繰りに悩まれる会社経営の方や個人事業主の方も多いと思われます。公的な支援策も活用しつつ資金が不足する部分は、なるべく金利負担の少ない借入方法を検討しましょう。

コロナ不況で厳しい状況が続く

新型コロナウイルス感染拡大を抑えるため、2021年1月には2回目の緊急事態宣言が11都府県に発令され、2月に入っても不安な状況が続いています。

経営者の方々は、この厳しい状況をどう乗り切るかが大きな課題となっているでしょう。助成金や給付金等、様々な公的な支援策が用意されていますが、すでに募集を締め切っているものや、締め切りが迫っているものもあります。今後、締め切りの延長や新たな支援策が出ていないか、経済産業省や自治体のコロナウイルス関連の情報はこまめにチェックしておきましょう。

事業の運転資金が不足する場合の支援

助成金や給付金、補助金に申請していても支給までには一定期間かかりますし、事業の売り上げが減少しても家賃や人件費などの固定費は発生します。厳しい状況の中、運転資金がショートしそうな場合は新たな資金調達を考えなくてはなりません。

政府系金融機関である日本政策金融公庫では、一時的に業況が悪化し、中長期的に業況が回復し発展が見込まれる事業者に対し「新型コロナウイルス感染症特別貸付」として小規模事業や個人事業なら最大8千万円、中小企業なら最大6億円まで無担保融資を行っています。さらに、「特別利子補給事業」を併用することで、特別貸付のうち、小規模事業や個人事業なら最大6千万円、中小企業なら最大3億円まで当初3年間、実質無利子で資金を調達することができます(令和3年2月1日現在)。

また、信用保証制度を利用した都道府県による制度融資により、民間金融機関でも実質無利子、無担保の融資が可能になっています。信用保証協会だけでなく民間金融機関も窓口となりワンストップサービスを行っていますので、取引のある金融機関に問い合わせてみましょう。

運転資金に該当するものは?

金融機関から運転資金を調達する場合、資金使途が重要になります。資金使途は、大きくは運転資金と設備資金に分けられます。運転資金は、一般的には営業活動に必要な資金です。具体的には商品の仕入れ代金や原材料費、従業員の給料の他、外注費、家賃、光熱費も含まれます。設備資金は、事業に使用する機械や車両の購入や建物の建設、事務所で継続的に使用する機器やパソコンの購入費などが該当します。運転資金の用途で借り入れをしたのに設備資金に使うことや、その逆もできませんので注意しましょう。

借りてしまえば何に使っているか分からないのでは?と思われるかもしれませんが、決算書の内容や領収書等から虚偽の借り入れが発覚することもあります。今後の金融機関との信頼関係に影響を及ぼす可能性もあるため、使途はきちんと守りましょう。

なお、ビジネスローンでしたら事業に使うという点は必要ですが、資金使途が自由なものも多数あります。融資までのスピードを重視するなら無担保のビジネスローンですが、借入額が大きい場合など、なるべく金利負担を少なくしたいなら不動産を担保としたビジネスローンを検討してもいいでしょう。合わせて、経費節減や売り上げ確保のための対策など、今できることを検討していきましょう。

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福島 佳奈美 (ふくしま かなみ)

ファイナンシャルプランナー(CFPR)。

大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。

※執筆日:2021年02月02日