第909回
ビジネスローンの利息を経費として計上するために必要なことは?
- フリーランスとして自宅で仕事をしています。昨年初めてビジネスローンを借りましたが、経理処理のしかたがわかりません。借入金の返済は経費になりますか?その他、経費の扱いについて気を付けることはありますか?(31歳 自営業)
- ビジネスローンの返済額のうち、利息部分や手数料などは経費として計上できます。個人事業主の経費については間違えやすい点が多いので、ルールを確認しておきましょう。
ビジネスローンの利息と手数料は経費に計上できる
経費とは、事業を行う上で利益を得るためにかかる費用のことをいいます。経費として認められれば、所得税を計算する際に売上から差し引くことができ、納税額を減らすことができます。
個人事業主が事業のために借り入れをした場合、返済額の元金部分は経費として認められませんが、利息部分については経費に計上することが認められています。利息とは別に、借り入れをするときに支払った手数料や保証料、印紙代などがあればそれらも経費にすることができます。また、繰上返済をして手数料を支払った場合にも経費に計上することができます。
100万円を4.30%、3年返済(元利均等返済)で借り入れ、2020年6月から返済開始した例を見てみましょう。借入時に手数料がかかっていないとすると、今回の確定申告で経費に計上することができるのは利息部分の合計額である16,580円です。この金額を「利子割引料」として経費に計上します。
返済月 | 返済額 | 元金部分 | 利息部分 |
---|---|---|---|
2020年 8月 | 29,613円 | 26,113円 | 3,500円 |
9月 | 29,613円 | 26,205円 | 3,408円 |
10月 | 29,613円 | 26,297円 | 3,316円 |
11月 | 29,613円 | 26,389円 | 3,224円 |
12月 | 29,613円 | 26,481円 | 3,132円 |
合計額 | 148,065円 | 131,485円 | 16,580円 |
事業資金の融資を受けるには、資金使途を明確にする必要があります。資金使途を偽って申込みをしたことが発覚すれば融資を断られるばかりでなく、金融機関との今後の取引にも影響します。また、一般的に事業資金の融資では生活費など消費性資金の利用は認められていないので注意が必要です。
経費になるもの、ならないもの
事業に関連してかかった費用は経費として計上することができます。一般的に経費と認められる支出の主な勘定科目は下記のとおりです。下記に挙げた以外にも、勘定科目を自分で作ることができます。研修費、会議費、新聞図書費など、用途に合わせて作っておくと経理処理がしやすくなります。
租税公課 | 荷造運賃 | 水道光熱費 |
旅費交通費 | 通信費 | 広告宣伝費 |
接待交際費 | 損害保険料 | 修繕費 |
消耗品費 | 減価償却費 | 福利厚生費 |
給料賃金 | 外注工賃 | 利子割引料 |
地代家賃 | 貸倒金 | 雑費 |
旅費交通費や広告宣伝費、消耗品費などはとてもわかりやすいですが、自宅で仕事をしている場合の水道光熱費などはどうなるでしょうか。自宅の一部を仕事場としている場合、家賃や水道光熱費、通信費などは、時間や面積などによって仕事で使っている割合と私的に使っている割合を区別し、仕事に使っている分だけを経費として計上します。持ち家の場合は、住宅ローンの利息部分、固定資産税や管理費のうち仕事で使っている分を経費に計上することができます。なお、住宅ローン控除を受けている場合、仕事で使用している床面積の割合が10%以上であればその部分については適用されません。また、仕事で使用している割合が全体の50%以上の場合は、自宅部分についても住宅ローン控除を受けることができませんので注意が必要です。
喫茶店で仕事や打ち合わせをした場合の飲食代、顧客に出すお茶やお茶菓子、取引先への慶弔金なども経費に計上することが可能です。一方で、スーツ代や健康診断の費用、生命保険料や社会保険料などは経費とすることができません。生命保険料や社会保険料は確定申告時に生命保険料控除や社会保険料控除の対象になります。
また、パソコンやプリンターなど10万円以上の備品を購入した場合は、原則として「資産」として扱い、一定期間にわたって減価償却していきます。なお、青色申告をしている人が30万円未満の備品を購入した場合、条件を満たせば少額減価償却資産の特例により一度に経費に計上できる場合があります。詳しくは国税庁のサイトや税理士に確認してみてください。
経費を適正に処理できれば、節税にも繋がります。経費として計上するためには、その支出が本当に経費であることを証明できなければなりません。そのためにも、借入金の使途を明確にする、領収書やレシートは普段からもらうことを習慣づけるなど、しっかりと対応することが大切です。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。
大学在学中にFP資格を取得。証券会社、銀行、独立系FP会社を経て独立。忙しくても無理なく実践できるメリハリ家計を提案するママFP。 ライフプラン全般の相談業務や家計簿診断、ライフプランセミナー講師、FP資格取得講座の講師として活動中。 学校での金銭教育にも注力している。
※執筆日:2021年01月26日