第888回
新型コロナ問題により売上が減少した事業者向けに「家賃支援給付金」
- 飲食店を経営しています。新型コロナウイルス感染防止対策などで客足が落ち、売上げが激減する一方、家賃などの固定費はかかるので大変です。家賃に関して国からの給付があると聞きましたが、どんなものでしょうか。(山口県 Kさん)
- 新型コロナウイルスの感染防止対策等のために売上が減少した事業者向けの支援として、地代・家賃の負担軽減を目的として賃借人である事業者に対して給付を行う「家賃支援給付金」の申請受付が始まっています。
売上高減少の条件を満たし、地代や家賃を支払っている個人・法人が支給対象
7月14日から申請受付が始まった「家賃支援給付金」は、5月の緊急事態宣言の延長等により、売上が減少した事業者の事業存続を支えるために、地代や家賃の負担を軽減する給付金制度です。
申請の期間は2020年7月14日から2021年1月15日までで、電子申請の締め切りは、2021年1月15日の24時まで。締め切りまでに申請の受付が完了したもののみが対象となります。
家賃支援給付金の支給対象となる事業者は、「事業のために地代や家賃を支払っている」個人や法人で、資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者です。医療法人や農業法人、NPO法人など、会社以外の法人も幅広く対象としています。
これらの事業者が、5月~12月の売上高について、1カ月で前年同月比▲50%以上、または、連続する3カ月の合計で前年同期比▲30%以上、の条件を満たした場合に支給対象となります。
最大給付額は、法人は600万円、個人事業主は300万円
家賃支援給付金は表1の算式に基づいて計算された「給付額(月額)」の6倍が一括で支給されます。
たとえば、個人事業主の方の支払賃料が30万円だった場合の給付額は20万円(30万円×2/3)なので、支給額は120万円(20万円×6)となります。個人事業主の方で支払賃料が45万円だった場合には、給付額は25万円+(45万円-37.5万円)×1/3=27.5万円で、支給額はその6倍の165万円ということになります。
支払賃料(月額) | 給付額(月額) | |
---|---|---|
法人 | 75万円以下 | 支払賃料×2/3 |
75万円超 | 50万円+【支払賃料の75万円の超過分×1/3】 ※ただし、100万円(月額)が上限 |
|
個人事業主 | 37.5万円以下 | 支払賃料×2/3 |
37.5万円超 | 25万円+【支払賃料の37.5万円の超過分×1/3】 ※ただし、50万円(月額)が上限 |
経済産業省 中小企業庁 家賃支援給付金に関するお知らせ(2020年8月11日版) より
なお、要件にあてはまっていれば、申請期間中のどの月でも申請をすることができます。したがって、直近で家賃の支払いの猶予を受けていたり、値下げまたは免除を受けていたりする場合には、元の水準の賃料に戻った時に元の水準で賃料を支払って申請すれば、元の賃料の水準を対象として給付金を受けとることができます。
また、新型コロナウイルス感染症問題により地方公共団体から賃料にあてるための支援を受けている場合には、家賃支援給付金が減額される可能性があります。
電子申請が困難な方には、申請サポート会場でサポート
家賃支援給付金の申請は、家賃支援給付金ポータルサイトからの電子申請で手続きします。郵送での申請は受け付けていません。ただし、電子申請が困難な方向けには、各都道府県に申請サポート会場が設けられており(完全予約制)、申請のサポートが受けられるようになっています。
申請には、表2のような書類を準備してから、ポータルサイトで電子申請を行います。なお、支給対象の条件や、添付書類の条件を満たすことができない場合でも「例外」として申請ができる場合があるので、ポータルサイトや「家賃支援給付金申請要項」等をご確認ください。
書類に不備があると再申請が必要になり、給付金の受取りまで時間がかかることになります。ポータルサイトには、書類の不備や注意する点についてまとめたコーナーもあるので参考にされるとよいでしょう。
表2 申請に必要な書類
[2]申請時の直近3カ月分の賃料支払実績を証明する書類
[3]本人確認書類
[4]売上減少を証明する書類(確定申告書、売上台帳等)
まとまった資金を受け取ることができる家賃支援給付金は、新型コロナウイルス問題で経営が難しくなっている事業者にとって心強い制度です。
ただし、家賃支援給付金の申請に必要な書類を用意して申請手続きをはじめてから資金を受け取るまでの間には時間がかかります。給付金の手続きを進めつつ、差し迫った出費には必要書類が少なく審査期間も短いビジネスローン等も活用されるとよいでしょう。