第480回
2012年上半期の動向&今後の資金調達は?
- 親子二代から町のスポーツ用品店を経営しています。今年の夏のオリンピックの影響からか、例年よりは多少売れ行きも良くなっていますが、なかなか増収とまではいかないのが現状です。今後の資金調達のポイントはどうでしょうか?(Y.K 40代 自営業)
- 2012年上半期のデータを見ると、倒産件数自体は3年連続減少しているものの、小売業や卸売業などの倒産件数は前年の同じ時期を上回る結果となっており、厳しい状況が続いています。円滑な経営を行うためには、売上の増加やコスト削減、為替や消費税増税に向けた対策など、それぞれ内容に応じた施策を実施しましょう。資金調達についても、公的支援策を中心に、状況に応じてビジネスローンをはじめとする民間融資の活用など、柔軟な対応を心がけましょう。
2012年上半期の企業倒産件数は3年連続減少
今年7月、帝国データバンクの2012年上半期(1~6月)の全国企業倒産件数に関する調査結果が発表になりました。調査結果によると、企業倒産件数は前年同期比1.5%減の5760件で3年連続マイナス。とくに建設業、製造業がともに前年同期比2ケタの減少となっています。減少した主な要因としては、各種金融支援策や復興需要を受け、東北が前年同期比32.5%減と大幅に減少したことなどが挙げられています。一方、卸売業、小売業など4業種では前年同期を上回るという結果が出ています。
順調な市場でも中小企業にとっては厳しい
スポーツ用品店を営んでいるY.Kさんは、「売れ行きは良さそうだが増収にはなっていない」と感じているようですが、確かに今年は、7月末からのロンドンオリンピック開幕のほか、それ以前から行われている各競技の代表選考争い、サッカーのW杯アジア予選や欧州選手権なども重なり、2012年上半期はスポーツ界が盛況です。さらに数年前からの健康ブームやメタボ対策と相まって、多くの人がジョギングやウォーキングを楽しんだり、週末のスポーツで汗を流したりする様子を目にする機会も多くなりました。
ところが、前述の帝国データバンクの調査によると、スポーツ用品小売業者2,970社の売上合計は増加基調にあり、大手は増収となっているものの、年商10億円未満の小規模業者は10年連続で低迷しているという結果が出ています。
実際に統計で調べてみると、2011年の家計の運動用具類への平均支出額は1万4,513円と2年連続で減少。なんと10年前(2002年)と比べても約17%減少しているという結果が出ています。(総務省「家計調査(平成23年)」(二人以上の世帯))
要するに、多くの人の健康志向の高まりによってマーケット全体は上昇していても、末端の中小企業はその恩恵を享受することができていないという状況です。
今後の経営&資金調達のポイントは
このような統計データからも分かるとおり、今年後半以降も、節電による営業機会の損失や、消費税・社会保障費アップによる先行きの不透明感の増大、消費マインドの落ち込み等、日々変化する消費者動向に合わせた経営のスピードがこれからより一層、求められます。資金繰りで苦しむ中小企業にとっては、引き続き厳しい状況が続くということを覚悟しなければなりません。
円滑な経営を行う上では、売上の増加や原材料・公共料金等のコスト削減、円高による為替対策や消費税アップに向けた対策など、それぞれ内容や分野別に応じた施策をコマメに検討し、実施することが必要です。
また、資金調達については、公的支援策を中心に、状況に応じてビジネスローンなど民間融資も活用するなど、柔軟な対応を行うことが必要不可欠です。事業資金は、主に無担保ローンと有担保ローン(不動産担保ローン、その他の担保ローン)に分かれます。以前のコラムでもご紹介しておりますので、参考にしてみてください。
【参考リンク】
なお、2009年12月から導入され、倒産件数減少に一役買っていた「中小企業金融円滑化法」ですが、「再延長」された来年の3月で打ち切りになる見通しです。
期限は迫っておりますが、中小企業等の経営改善支援や事業再生支援なども取り組んでいますので、是非とも有効に活用されることをお勧めします。
【参考リンク】