第312回
経営者は国のセーフティネット貸付に注目!
- 新聞を見ると倒産が増えているようで、不安になってきます。今のところ切羽詰った状況ではありませんが、もし資金繰りに困った場合、やはりビジネスローンがいいのでしょうか?(S.Oさん、32歳、サービス業経営)
- 世界的な景気の悪化を反映し、国内の企業倒産は6年ぶりの高水準になっています。今後どうなるかは誰にもわかりませんが、いざという時のために、中小企業向け公的融資やローンの情報収集をしておきましょう。日本政策金融公庫のセーフティネット貸付制度にも注目です。
大企業も戦後最多の倒産!
100年に1度と言われる経済危機を証明するかのように、企業の倒産件数が急増しています。東京商工リサーチ「全国企業倒産状況2008年度」によると、昨年度の倒産件数は前年比で12.3%の増加、負債総額は戦後5番目という大きさでした。2008年9月のリーマンショック以降、倒産が急増し、産業・地区を問わず、全てで前年を上回ってしまったのです。 さらに今回の倒産は、中小企業のみならず、大企業にも影響が及んでいることが特徴です。上場している企業の倒産が45件というのは、戦後最多の件数だそう。いかに今回の危機が「急激で広範囲でインパクトが大きいか」がわかりますね。例え企業を経営していなくとも、職を失ったり、給与が減ったり、多くの人が景気の悪化を実感した事でしょう。
問題はこの厳しい状況が「今後いつまで続くか」です。株価が多少上向いてくるなど、明るい兆しも見えてはいますが、「すでに今年に入ってから上場企業の倒産が14件もあり、このペースを鑑みると今年度も相当厳しいと言わざるを得ない」(東京商工リサーチ)という意見もあります。万が一の場合を考え、余裕のあるうちに、資金繰り対策を考えておきたいものです。
日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付」とは?
中小企業の資金調達方法には、国や自治体が主体となる公的融資の他に、銀行やノンバンクが主体となる民間融資があります。 ビジネスローンは民間融資に含まれます。まずは、金利面で有利な公的融資から検討すると良いでしょう。現在、日本政策金融公庫や信用保証協会、商工会議所、自治体などの公的機関が、厳しい経営環境にある中小企業のための融資制度に力を入れています。
中でも日本政策金融公庫のセーフティネット貸付は、今年の1月30日に制度の拡充があり、さらに使いやすくなりましたので、注目してみましょう。
セーフティネット貸付一部概要
経営環境変化対応資金 | 金融環境変化対応資金 | |
融資対象者 | 社会的、経済的環境の変化により、売上や利益が減少する等、業績が悪化している方 | 金融機関との取引状況の変化により、資金繰りに困難を来たしている方 |
貸付限度額 (国民生活事業の場合) |
4,800万円 | 別枠4,000万円 |
資金使途 | 運転資金、設備資金 | |
返済期間 | 運転資金:8年以内 設備資金:15年以内 | |
利率 |
基準利率2.4%(業績が特に悪化している方は-0.3%) |
(平成21年4月現在、日本政策金融公庫ホームページより)
資金調達の理由が、1.売上や利益の減少によるもの、2.金融機関の貸し出し態度によるものに分けられ、2枠の資金が設けられています。従って、どちらにも該当する場合、最大8,800万円(4,800万円+4,000万円)もの融資を受けられる事が可能です。また、業績が特に悪化している人が運転資金を借りる場合、金利がさらに割り引かれ、8年間2.1%の固定金利になります。経営者にとって、まとまった資金をこれだけの低金利で借りられるとは、大変心強い制度ですよね。
ビジネスローンが必要な場合もある
ただし、言うまでもありませんが、公的融資においても審査があります。希望者全員が上記のような融資を受けられるとは限らず、ケースによっては担保や保証人が必要になったり、保証料を支払う事になったり、最悪の場合は融資を断られる事もあるでしょう。また、公的融資は、民間融資と比べて準備する書類が多く、審査に時間がかかると一般的には言われております。企業経営には急に資金が必要になる事態もありますので、審査スピードも重要な要素として考えなければいけません。公的融資より金利は高くなりますが、手続きが簡単で素早い対応をするビジネスローンも、事前に比較検討しておくとより安心でしょう。