第203回

ビジネスローンの審査にとおる「決算書」は?

ビジネスローンを申し込む際に、決算書の提出を求められましたが、どのような決算書であれば、融資が受けられるのでしょうか?(38歳、自営業)
金融機関としては、「売上が年々伸びていて、黒字経営で、欠損金・含み損のない返済能力が高い決算書が'よい'決算書といえるでしょう。が、そんな理想的な会社ばかりだったら誰も苦労はしません。ここでは、融資を申し込む際のツールとしての決算書を分析してみましょう。

ビジネスローンの申込みに、「決算書」は必須アイテム?

公的融資や大手銀行等はもちろんのこと、ノンバンク系のビジネスローンでも、事業資金などの融資申し込み時に直近の決算書(1期分~3期分)の提出が要件となっている場合が少なくありません。では、金融機関では、決算書のどこをチェックしているのでしょうか?

(1) 売上は伸びているか?

売上規模・自己資本比率はどうか?まず、売上が前年より伸びていること。また、売上規模が小さい場合、多少の経済環境の悪化が大きなダメージにつながる可能性が高いので、審査ではその点がチェックされます。ただし、規模が大きければ良いというものではなく、会社規模が小さくても、資本を増やすなど体力のある経営を心がけることが大切。そして、自己資本比率がどの程度あるかも要チェックです。この比率が高いほど安定経営とみなされます。

(2) 黒字経営か?

やはり、赤字より黒字。利益が出ていることが大切です。赤字の場合でも、その年の特殊要因などで一時的な赤字であれば審査上、考慮の余地はあるようですが、慢性的な赤字の場合は、難しいでしょう。ただし、赤字だからといって、「粉飾決算」は問題外。発覚後の信用回復への多大な時間や労力を考えると意図的・作為的な行為は絶対にやめましょう。

(3) 欠損金・含み損はあるか?

帳簿上、利益が上がっていても、過去からの赤字である「欠損金」が積み上がっている場合、融資が受けられないことがあります。また、不動産や有価証券などに多額の「含み損」がある場合も、それが欠損金とみなされる場合もあります。そのため、これらの損失を抱えている場合は、これらを減らしておくよう工夫や努力も必要です。借入金等の削減も同様です。

決算書だけであきらめないで!まだある融資実行の道

これらのポイントを見てわかるとおり、金融機関としては、倒産リスクがなく、健全で安定した経営を行っている実績のある会社であれば、融資をしてくれるというわけで、それを知るには決算書等が確実なツールになります。しかし、そんな会社ばかりではありませんし、逆にいえば、業績があまり良くない、開業して間もない、つまり、まだ経営が安定していない中小企業こそ切実に融資のニーズがあるものです。

その場合は、現実的でしっかりとした「事業計画書」や「経営改善計画書」を作成することで融資への道が開ける場合もあります。つまり、決算書等のように過去の数字には表れない、将来の会社の期待度に対して融資をしてくれるわけです。
計画書を作成する際には、業績や資金繰りの面から無茶のない安全な計画であることも大切ですが、慎重すぎるよりは、将来に向けての明るい展望が描かれていることも必要。自分が貸す側の立場に立って、融資をしたくなるような前向きな姿勢が重要だということでしょうか?

私が書きました

黒田 尚子 (くろだ なおこ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、第2種情報処理技術者、初級システムアドミニストレータ。

92年大学卒業後、日本総合研究所に入社。約5年3ヶ月間、システム開発に携る。退社後、98年ファイナンシャル・プランナーとして独立。 まったくの異業種からの転職のため、できるだけ幅広いテーマを手掛けるようにしている。雑誌・インターネットなどの連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを行う。モットーは「夢をカタチに」。現在、夫1人&猫1匹と暮らす。

※執筆日:2007年02月13日