第1116回
《中小事業者の方へ》事業の成長・人材確保に、政府の支援策の活用を
- 製造業の会社を経営しています。事業拡大を考えていますが、頑張ってくれている従業員の賃上げや、人手不足も課題です。年末の予算成立のニュースで、政府の経済対策で賃上げ支援策があると聞きましたが、中小企業への支援策にはどのようなものがあるでしょうか。(40代・会社経営)
- 2024年12月に成立した2024年度補正予算による中小企業支援策には、賃上げや人材確保のための支援策が盛り込まれています。補助金等の、順次発表される募集情報にご注目ください。
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2024年度の補正予算による中小企業向けの支援策は
2024年12月17日、経済対策などに充てるため、2024年度の補正予算13兆9433億円が成立しました。「物価高の克服」「日本経済・地方経済の成長」「国民の安心・安全の確保」に関する対策を目的としたもので、「日本経済・地方経済の成長」のため、中小企業等への支援策も多く盛り込まれています。
中小企業・小規模事業者向けの支援策には、次のようなものがあります。
- 持続的な賃上げを実現するための、生産性向上・省力化・成長投資支援
- 価格転嫁対策の強化
- 資金繰り支援、経営改善・事業再生・再チャレンジ支援
- 中小企業・小規模次長者活性化(相談体制強化等)
- 災害からの復旧・復興
(参照)中小企業庁「令和6年度補正予算(中小企業・小規模事業者等関連予算)令和6年12月25日更新」
「1.持続的な賃上げを実現するための、生産性向上・省力化・成長投資支援」として、「中小企業成長加速化補助金」の創設や「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」など制度の拡充に多くの予算が充てられています。
中小企業・小規模事業者等の成長・賃上げ等を支援する補助金制度
2024年度補正予算によって、創設・拡充される、中小企業・小規模事業主向けの補助金制度をいくつかみてみましょう。
中小企業成長加速化補助金
今回創設された中小企業成長加速化補助金は、「売上高100億円への飛躍的成長を目指す中小企業」を対象としています。工場や物流拠点の新設や増築、イノベーション創出に向けた設備導入、自動化による革新的な生産性向上などを活用のイメージとして、大胆な設備投資を支援することが目的とされ、補助の上限額は5億円(補助率1/2)と大きなものになっています。
補助事業の要件としては、(1)投資額1億円以上、(2)「売上高100億円を目指す宣言」を行っていること、(3)賃上げ要件を満たすこと、などが挙げられています。
大規模な設備投資を計画されている場合には、検討したい制度ですね。
(参照)中小企業庁「中小企業成長加速化補助金」
ものづくり・商業・サービス・生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス・生産性向上促進補助金は、生産性の向上や持続的な賃上げに向けた新製品・新サービスの開発に必要な設備投資等を支援する制度です。
基本要件として、中小企業・小規模事業者等が革新的な製品・サービス開発を行うこと、付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加すること、1人当たり給与支給総額の年平均成長率の増加(事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上又は給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加)などが挙げられています。
補助金額の上限は、「製品・サービス高付加価値化枠」と海外需要開拓等の取り組みを支援する「グローバル枠」で異なり、「製品・サービス高付加価値化枠」は750万円~2,500万円、「グローバル枠」は3,000万円です。さらに、大幅な賃上げに取り組む事業者には補助上限額が100~1,000万円上乗せ、最低賃金の引上げに取り組む事業者には、補助率を2/3に引き上げという、上乗せ支援もあります。
(参照)中小企業庁「令和6年度補正予算 ものづくり・商業・サービス・生産性向上促進補助金」
IT導入補助金
IT導入補助金は、業務の効率化やデジタル技術やITツール等の導入費用、インボイス対応にも活用できる補助金です。ソフトウエアの購入やクラウド利用料、サイバーセキュリティサービス利用料などの支援が受けられます。IT導入などで業務の効率化が図られれば、人的負荷が減り、人手不足解消にもつながりますね。
IT導入補助金には表1のような枠があり、補助対象や補助額・補助率などが異なります。
枠/類型 | 通常枠 | 複数社連携IT導入枠 | インボイス枠 | セキュリティ対策推進枠 | |
---|---|---|---|---|---|
インボイス対応類型 | 電子取引類型 | ||||
活用イメージ | ITツールを導入して、業務効率化やDXを推進 | 商店街など複数の中小企業・小規模事業者で連携してITツールを導入 | ITツールを導入してインボイス制度に対応 | 発注者主導で取引先のインボイス対応を促す | サイバーセキュリティ対策を進める |
(参照)中小企業庁「「IT導入補助金」でIT導入・DXによる生産性控除を支援!」
簡単に3つの補助金についてご紹介しましたが、中小企業・小規模事業者向けには、他にも目的に応じたさまざまな補助金が用意されています。募集要項の発表や申請受付のスケジュールなどは補助金によって異なりますので、中小企業庁ホームページや各補助金事務局のホームページでご確認ください。
早急な資金確保などには、ビジネスローンも検討を
中小企業や小規模事業者の事業成長や生産性向上、賃上げなどを支援する補助金制度はさまざまに設けられていますが、募集開始や申請・交付決定までのタイミングが合わなかったりする場合もあります。資金使途や補助金の利用条件が合わない場合もあるでしょう。
補助金の利用が難しい場合や早急な資金需要には、民間のビジネスローンの利用も選択肢になるでしょう。無担保型のビジネスローンの場合、資金使途は自由で、審査期間は即日~数日程度と素早い借入れが可能です。
資金の使途や必要な時期に応じて、補助金やビジネスローンなどを使い分け、事業成長にお役立てください。
私が書きました
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ファイナンシャル・プランナー(CFPR)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー。
大学卒業後、教育系出版社に入社、教材・雑誌編集などを担当。その後、独立系FP会社を経て、2000年春より独立系FPとして、ライフプラン全般の相談業務や雑誌・HPのマネー系コラムの執筆などを行っている。
※執筆日:2025年02月04日