第1088回

クラウドファンディング成功のポイントは?他の資金調達もチェック

早期退職をし、地元の食材を使ったカフェを開業したいと考えています。開業資金の一部としてクラウドファンディングを検討していますが、どんな点に注意したらいいでしょうか?(千葉県・Sさん)
近年、新しい資金調達の方法として、クラウドファンディングの活用が広がりをみせています。クラウドファンディングのサイトに申請し掲載が認められれば、募集開始となります。始めること自体は難しくはありません。魅力あるプロジェクトであるかが最も重要なポイントになります。
カフェを経営する男女

クラウドファンディングには6つのタイプがあり、個人なら購入型が一般的

起業・開業する場合、一般的な資金調達方法は金融機関からの借り入れになります。しかし、まったくのゼロからのスタートとなると、金融機関から融資を受けるのが難しいことがあります。事業計画書など、さまざまな書類をそろえる必要もあります。借り入れですから、当然、返済をしていかなければなりません。

クラウドファンディングの場合は、インターネットを介して不特定多数の人から小口で資金を集めることになります。「こんなモノ、お店、サービスを作りたい」「社会の問題を解決していきたい」といった夢、アイデア、思いを発信することで、その内容に共感した支援者が集まれば、手軽に資金調達が可能となります。

クラウドファンディングは(1)購入型、(2)寄付型、(3)融資型、(4)株式型、(5)ファンド型、(6)ふるさと納税型の6つのタイプがあります。このうち、(3)、(4)、(5)については、貸金業や金融商品取引法などの免許、資格が必要で、個人では行うことができません。(6)は自治体がふるさと納税の仕組みを使って行うものです。個人で募集できるのは、(1)購入型か(2)寄付型となります。

購入型と寄付型の違いは、「リターン」の有無です。支援者が資金援助をする代わりに商品やサービスなどの「リターン」が得られるのが購入型。基本的にリターンがなく、お礼として写真や手紙、メールを受け取るのが寄付型で、被災地支援や社会貢献、社会問題解決のプロジェクトでの利用が多いようです。

ご相談者のような飲食店を開業したいというケースでは購入型を選択することになります。

メリット・デメリットを理解し、魅力ある事業計画、ストーリーを作成する

購入型のクラウドファンディングには「All or Nothing型」と「All in型」の2つの種類があります。

「All or Nothing型」は募集期間内に目標金額に達しなかった場合、集まった資金は受け取れず、支援金は支援者に返金されリターンは発生しません。一方、「All in型」は目標金額に達しなくても、期間内に集まった資金を受け取ることができ、リターンが発生します。

どちらがいいかは、プロジェクトの内容によりますが、目標金額に達することで、プロジェクトや事業を開始できるのであれば「All or Nothing型」、集まった資金の多寡によらず、プロジェクトや事業は開始し、その運営資金に充当するといった場合は「All in型」が向いているといえるでしょう。ご相談者のように、飲食店を開店することが決まっているならば、ある程度は自己資金でまかない、クラウドファンディングは運営資金に充てるといった使い方もできるでしょう。

クラウドファンディングは手軽に利用できるのが最大のメリットですが、目標金額を達成させるためには、魅力があり、支援したいと思えるプロジェクトであるかにかかっています。他にはないアイデアや付加価値があるのか、お店であれば買いたい、行ってみたいと思えるような共感を得られるのか、リターンにも魅力があるかなど、成功のポイントはいくつかあります。発案に至ったストーリーや数多くの写真、動画をアップし、わかりやすく伝えることも重要です。

また、活動報告やプロジェクトの進捗をこまめに投稿する、SNSを最大限に利用し情報を拡散させるなど、募集期間内にもやることはたくさんあります。ファン作りという側面もあります。

ただし、目標金額に達するとは限りません。「All in型」では、予定していた資金が集まらなくても、利用サイトへの手数料(集まった資金の10%~20%程度)の支払いやリターンの用意、発送もしなくてはなりません。また、集まった資金はすぐに振り込まれるわけではありませんので、余裕のあるスケジュール、資金計画を立てることも大切なポイントです。

すべてをクラウドファンディングで資金調達できなければ、ビジネスローンを検討する

個人でも利用しやすいクラウドファンディングですが、すべての資金をクラウドファンディングで集めようとするのではなく、あくまでも事業資金の一部を調達するために利用するという考え方もあります。

開業までの時間に余裕があるのであれば、金利の低い政府系金融機関である日本政策金融公庫からの借り入れを検討するのもいいでしょう。ただし事業計画書をはじめ、必要な書類が多く、必ずしも融資の承認が得られるわけではありません。

短時間で審査結果がわかり、融資スピードが早いビジネスローンであれば、事業開始に合わせて借り入れすることが可能です。ビジネスローンは、法人や個人事業主が資金調達に利用できるローンで、無担保型と有担保型(不動産担保、証券担保など)があり、銀行などの金融機関やビジネスローン専業会社、不動産担保ローン専業会社などが提供しています。

いずれにしても開業を実現するためには、クラウドファンディングも含めて、さまざまな資金調達の方法を検討するようにしましょう。

【参考リンク】

私が書きました

伊藤 加奈子 の写真

伊藤 加奈子 (いとう かなこ)

ファイナンシャル・プランナー。

大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。不動産、住宅、マネー情報誌の編集者、マーケティングプランナーを経て2003年独立。フリーランスで各種媒体のエディトリアルアドバイザーを務める。2013年沖縄移住後は、各種WEBサイトに不動産、ライフプラン、マネープランに関するコラムの執筆を中心に活動中。

※執筆日:2024年07月11日