第898回
法改正により定年まで長くなる!経営者の対応ポイントは?
- 従業員約50名の自動車部品工場を経営する者です。来年、法律が改正されて定年が長くなると聞きました。従業員の中には60代の者もいます。会社としてどんな対応が必要でしょうか。(Tさん 東京都 55歳)
- 2021年4月に、70歳までの就業確保を事業主の努力義務とした「改正高年齢者雇用安定法」が施行されます。経営者の方は、改正内容を踏まえ、高齢者の労働条件の見直し、人事制度や給与体系の整備などの対策を考えておきましょう。
改正高年齢者雇用安定法が施行!その内容は?
人生100年時代、高齢者になっても働く人の割合は年々増えています。内閣府が発表した「令和2年版高齢社会白書」によりますと、60代後半でも働く人の割合は、男性では58.9%、女性では38.6%と、年齢にかかわらず長く働く高齢者の姿がうかがえます。
現状では、高年齢者雇用安定法により従業員が希望すれば、下記(1)から(3)いずれかの方法で65歳まで雇用することが企業に義務付けられています。
(2) 定年の延長
(3) 再雇用制度の導入
2021年4月に施行される改正高年齢者雇用安定法では、上記3つに加え、
(5) 事業主が実施または出資する社会貢献活動に従事する制度の導入
のいずれかを事業主が行い、65歳から70歳までの就業機会を確保することが企業の努力義務とされます。なお、(4)(5)については、従業員の過半数が参加する組合か過半数代表者の同意を得てから導入することが必要になります。
経営者として考えておきたいこと
特に中小企業にとっては、ベテラン社員を70歳まで雇用継続することで、人材不足や労働力不足の悩みを解消できるのはメリットでしょう。その一方で、やはり支払う賃金の確保は課題となるでしょうし、中長期的には新卒採用や若手の中途採用計画を見直す必要が出てくるかもしれません。
今回の高齢者雇用安定法の改正は、70歳までの雇用継続を「努力義務」とするものですので、直ちに対応が必要になるというわけではありません。しかし、時代の流れとして70歳までの雇用継続がいずれ「義務化」されることも視野に入れて早めに準備しておく必要があるでしょう。
具体的には、65歳以降の労働条件や給与体系および退職金制度の再考、人事制度や就業規則の見直しなどが考えられます。
65歳を間近に控えた従業員が多くいて、優秀な人材の活用、若手への技術の伝承など、会社へのメリットが大きいと考えられる場合、今回の改正に合わせて早めに雇用継続に対応するのも一つの方法です。その際に新たに必要となる高齢者の賃金や、制度を整えるために必要な社会保険労務士など外部コンサルタントの費用など、資金が一時的に不足するような場合はビジネスローンを検討しても良いでしょう。急ぎの資金調達でも比較的早く審査から借り入れまで進めることができます。
私が書きました
ファイナンシャルプランナー(CFPR)。
大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。
※執筆日:2020年10月30日