第850回
個人事業主の方はチェック!節税の方法を確認!
- 税制改正により2020年から青色申告制度も変わると聞きました。個人事業主なので毎年確定申告で65万円の控除を受けていますが、今のうちに何か準備が必要でしょうか。(Tさん 自営業 神奈川県)
- 2020年の申告分(2021年3月提出締切分)から、「e-Taxによる申告」か「電子帳簿保存」のどちらかを行わないと65万円の青色申告控除は受けられません。余裕をもって早めに対応しましょう。
2020年から青色申告制度が変更に!
2019年も年末が近づき、個人事業主はそろそろ確定申告の準備を始める時期ではないでしょうか。 2018年度税制改正により所得税に大きな変更点があり、個人事業主も2020年の確定申告分から対応が必要になります。
まず、所得税における基礎控除額が38万円から48万円に変更になります。 基礎控除額は全ての納税義務者が無条件で課税所得から差し引くことができるものです。 その一方で、これまで65万円だった青色申告特別控除が55万円になります。
但し、「e-Taxによる申告」または「電子帳簿保存」を行っていれば、これまで通り65万円の青色申告特別控除を受けることができます。 つまり、これまでより控除額を10万円分増やすことができるのです。 前提として、不動産所得または事業所得による取引を複式簿記で記帳を行い、貸借対照表と損益計算書の作成をしていることが必要です。
なお、現金主義や簡易帳簿による記帳でも認められる10万円の青色申告特別控除の場合は、改正後も控除額は10万円のままです。 よって青色申告控除額が10万円、55万円、65万円の3通りになるのです。
65万円控除を受けるためのe-Taxとは?
65万円の青色申告特別控除を受けるために必要なe-Taxとは、インターネットによる電子申告のことです。 こちらはすでに利用されている方もいらっしゃるでしょう。 基本的には、マイナンバーカードとICカードリーダライタを利用して自宅のパソコンから確定申告書と青色申告決算書のデータを送信して申告する方法になります。
まだマイナンバーカードを取得していない方は、いずれ必要になると考えて早めに申請した方が良いでしょう。 申請して手元に届くまでの期間は1か月程度かかります。 書類に不備があればさらに時間がかかりますので、来年度に備え本年度分の確定申告からe-Taxを利用してみるのも良いでしょう。 ICカードリーダライタは家電店で購入できます。
また、事前に税務署で本人確認をしたうえで電子申告に必要なIDとパスワードを発行してもらい、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」から申告する方法もあります。 但し、こちらはマイナンバーカードやICカードリーダライタが普及するまでの暫定措置です。
65万円控除を受けるための電子帳簿保存とは?
65万円の控除を受けるためのもう一つの方法である電子帳簿保存は、一定の要件の下で帳簿を電子データのまま保存する制度です。 この制度の適用を受けるためには、帳簿の備え付けを始める3か月前までに税務署に承認申請書を提出する必要があります。 但し、2020年分に限り、2020年9月29日までに承認申請書を提出すればよいことになっていますので、忘れないうちに申請しておきましょう。 他にも会計ソフトの対応も必要ですし、領収書などの書類を電子データとして保存する準備も必要です。詳細な要件は国税庁ホームページで確認してください。
65万円控除を受けるための準備は早めに!
消費税が10%となり税負担も増えている中、青色申告で65万円の控除を受けられるのは魅力的です。 これまで10万円の控除しか受けていなかった方や白色申告だった方は、65万円の控除を受けることを検討してはいかがでしょうか。 パソコン等の電子機器や会計ソフト等の購入資金が不足する場合はビジネスローンも検討してみましょう。 購入したものは必要経費として扱うことができますし、ビジネスローンの利息と手数料も経費になります。 一般事業融資と比較し、個人向けローンに該当するビジネスローンは、審査回答なども比較的早い事が魅力です。 2021年3月の申告ですが、2020年の初めから記帳方法を変えることが必要です。 書類の提出などの準備も含め、早めに対応することをおすすめします。
私が書きました
ファイナンシャルプランナー(CFPR)。
大学卒業後、情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務し、出産を機に退社。子育て中の2006年にファイナンシャルプランナー(CFPR)資格を取得する。その後、教育費や保険・家計見直しなどのセミナー講師、幅広いテーマでのマネーコラム執筆、個人相談などを中心に、独立系FPとして活動を行っている。
※執筆日:2019年11月26日