第662回
個人事業主は確定申告で借入金をどう扱えばよいか?
- 自宅を事務所にして自営業をしています。昨年、初めて事業者用のローンを借りて現在も返済中なのですが、確定申告での経費処理の仕方がわかりません。また、昨年住宅ローンを活用して購入した自宅も確定申告をする上で注意事項があるのでしょうか。
- 個人事業主が確定申告をする際、事業者用のローンの借入金や返済額の元金部分は経費として扱うことはできません。経費にできるのは返済額のうちの利息部分のみです。住宅ローンについては、利息部分の一部のみ経費にすることができます。個人事業主のルールにもとづいて確定申告をする必要があります。
事業者用ローンは返済利息分が経費計上できる!
個人事業主が事業のために借り入れをした場合、借入金額を売上にできないのと同じように、返済額の元金部分も経費に計上することはできません。しかし、支払った利息額は、借り入れをするためのコストと認められるため、経費にすることができます。
以下の例で考えてみましょう。
返済月 | 毎月返済額 | 元金部分 | 利息部分 |
---|---|---|---|
2015年7月 | 59,315円 | 52,149円 | 7,166円 |
2015年8月 | 59,315円 | 52,336円 | 6,979円 |
2015年9月 | 59,315円 | 52,523円 | 6,792円 |
2015年10月 | 59,315円 | 52,711円 | 6,604円 |
2015年11月 | 59,315円 | 52,900円 | 6,415円 |
2015年12月 | 59,315円 | 53,090円 | 6,225円 |
合計額 | 355,890円 | 315,709円 | 40,181円 |
確定申告は1月から12月までの間の所得に関する申告ですので、今回の確定申告で経費にできるのは、7月からの返済金額のうち、利息額の合計40,181円です。毎月返済額や元金部分は経費として認められません。利息とは別に、借り入れをするときに支払った手数料や保証料、印紙代などがあれば経費にすることができます。また、繰上返済をして手数料を支払った場合にも経費計上することができます。
住宅ローンを返済中の事務所兼自宅も一部を経費として扱うことができる!
賃貸住宅の自宅の一部を事務所として使っている場合は、家賃のうち、仕事で使用している割合を経費計上することができます。割合の決め方は、床面積を用いる方法が一般的です。
たとえば、床面積60平米の家賃15万円の賃貸住宅に住み、仕事で使う床面積が15平米の場合、家賃のうちの37,500円(=15万円×15平米/60平米)は経費として認められます。
持ち家の場合も一般的には仕事で使用している床面積割合を基準に考えます。住宅を保有することで発生する以下の主な費用のうち、仕事の床面積割合に相当する額を経費に計上できます。
・住宅ローンの利息
・火災保険料
・固定資産税・都市計画税
なお、住宅ローン控除を受けている場合、仕事で使用している部分については適用されません。また、仕事で使用している床面積が全体の50%以上の場合は、自宅部分についても住宅ローン控除を受けることができませんので注意が必要です。
個人事業主が確定申告をする際には、仕事の仕方に応じて細かいルールや考え方が決められています。インターネットや書籍を見ながら手探りで進めると申告にモレやヌケがあるかもしれません。一度、税理士に相談してルールをはっきりさせてはいかがでしょうか。ルールが明確になれば、日々の記帳でも迷わなくてすみ、申告時の作業がスムーズに進みます。
私が書きました
ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。
教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。
※執筆日:2016年02月22日
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