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第489回

「信用力」と「状況」に応じた企業の資金繰り対策を!

シャープが資金繰りに困って不動産担保ローンを利用しているという記事を見ました。小規模ながら私も会社経営者の1人として気になったのですが、企業の資金調達の方法として不動産を担保にしたローンもあるのですね。中小企業も利用できますか?(Kさん 36歳 会社経営)
中小企業の資金調達の方法として、民間のビジネスローンを利用する手がありますが、それと並ぶ選択肢として不動産担保ローンが挙げられます。中小企業でももちろん利用できます。ただし、担保にできる不動産を所有していることが条件です。

シャープが倒産の危機に!?

日本を代表する優良企業の1つであったはずのシャープが、倒産の危機にあると報じられました。液晶テレビや太陽電池に関する事業の赤字拡大で、2013年3月期の最終赤字が2500億円へと大幅に拡大する見通しと発表されたのです。

経営不振に陥った原因は、工場新設などで過剰な設備投資を行った一方で、液晶テレビの価格の暴落などが重なり、「フリーキャッシュフロー」がマイナスになる状況が続いたことが原因であると見られています。

資金繰りに関して、経営状態が良かったときでも株式の発行では行わず、主に銀行からの借入に頼ってきました。その結果、売上が落ちた時に負債が重荷になるという悪循環を招いたのです。

信用力が失墜したシャープは、銀行から新たな融資が受けられずに資金繰りで苦境に立たされ、大幅なリストラを進めるとともにさまざまな方策をとっています。

「信用力」と「状況」に応じた企業の資金繰り対策

企業にとって信用力は大きな武器です。シャープも以前は、銀行から無担保で融資を受けたり、社債やコマーシャルペーパー(CP)を発行して資金調達をしていました。しかし、それは信用力があってできることでした。

来期に莫大な赤字が見込まれ、深刻な経営不振が明らかになったシャープは、これまでのように銀行からの無担保融資や、社債・CPによる資金調達が難しくなりました。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業から出資の話が持ち上がりましたが、その後の株価の急落や、その他の条件面の調整が進まず、見通しが立っていません。

そんな状況でシャープが行ったのが、本社や主力工場を担保にした銀行からの不動産担保融資。有担保で長期安定資金を調達し、それによって、事業を再構築していこうとしている状況です。

こうした手法は大手企業では異例のことと報じられましたが、中小企業の場合は経営が行き詰まって信用力が落ちたときだけでなく、経営が健全な状態でも長期での借入れが必要な場合や借入額が大きい場合などは、選択肢に加えることができます。

ただし、当然ながら不動産担保ローンを利用するには、社屋などを所有しているか、あるいは社長が自宅などを担保として提供することになります。

中小企業の「ビジネスローン」

中小企業向けの「ビジネスローン」とは、通常、無担保のローンを指します。1000万円程度まで借りることができ、借入期間は短期。担保も保証人も不要(法人契約の場合は代表者の連帯保証が必要)な反面、金利が高め(業績などを反映して金利は決まります)。

ただしそれは、あくまでも狭い意味の「ビジネスローン」のことを指します。広くとらえるのであれば、選択肢はもっと広がります。

まずは、1度、ビジネスローンを探してみてください。担保の有無を限定せずに検索すると、ビジネスローンに交じって、フリーローンや不動産担保ローンなども並びます。こうした商品の中から、状況に応じて、できるだけ有利なものを利用するのが上手な借り方と言えるでしょう。

【参考リンク】

不動産担保ローンに関しては、前述のように、中長期で借りる場合や、1,000万円超える、借入額が大きい場合などに適しています。ただし、不動産担保ローンの場合は、抵当権設定などの手続きもあるため、時間やコストがかかります。そうしたコストも見込んで比較をする必要があります。

初めから限定せずに検索機能で抽出してから検討するのも一つの方法です。いずれのビジネスローンも審査を通らなければ利用できませんので、いくつか実際に申込をしてみて、審査が通った中から検討するのもいいでしょう。

今回のご質問は「中小企業でも不動産担保ローンが利用できるか」というものでしたが、もちろんできます。ご質問者の方も、ビジネスチャンスを逃さないよう、上手に活用するといいでしょう。

私が書きました

豊田 眞弓 (とよだ まゆみ)

ファイナンシャル・プランナー、シニアリスクコンサルタント。

20代前半より経営誌や経済誌、女性誌と広く手がけるライターとして個人事業を展開。1995年より独立系FPとして、雑誌やムック、新聞、サイトへの寄稿・監修、相談業務、講師などで活躍。「今日からの お金持ちレシピ」(明日香出版)をはじめ共著本など多数。

※執筆日:2012年10月05日