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第477回

売掛金を担保にして融資を受けることができる「売掛債権担保融資」とは?

サービス業の会社を経営していますが、人材以外にとりたたて会社の資産がないため、不動産を担保にした融資を受けることができません。運転資金を確保する方法のひとつに、取引先への売掛金を使って融資を受ける仕組みがあると聞いたのですが、どんな仕組みなのでしょうか?(会社経営 54歳)
「売掛債権担保融資」という仕組みです。企業が、自社の保有する売掛債権を担保にして金融機関から借入を行うもので、不動産担保に過度に依存しない資金調達の手段として、最近は徐々に浸透してきています。

中小零細企業の倒産懸念が大きくなっている

帝国データバンクの「倒産集計2012年5月報」によると、5月の倒産件数は1,013件。前月比は14.6%の増加、前年同月比も5.1%の増加となり3ヶ月ぶりに前年同月を上回っています。今後の見通しについても、特に中小零細企業においては、倒産件数が増加傾向を示す可能性が高いとしています。背景には、この夏の電力不足懸念や電気料金の値上げにより収益の圧迫が危惧されていること、消費税率の引き上げ時の増税分を価格に転嫁できるかが不安視されていること、金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に融資条件の変更を受けることができる中小企業金融円滑化法の期限が平成25年3月31日に迫り、金融機関が融資先企業の選別をする動きが活発化し、再建が難しいと判断される企業が出ることなどを挙げています。

厳しい経営環境のもと、中小零細企業は、会社を存続させるために安定した運転資金、手元資金の確保に工夫をこらす必要に迫られています。そんななか、近年では、従来型の不動産担保に過度に依存しない資金調達の方法として「動産担保融資(ABL)」という仕組みが普及しつつあります。

「動産担保融資(ABL)」とは、企業の事業価値を構成する資産(売掛金や在庫・原材料等)を担保とする融資制度です。

【参考リンク】

継続的に業績の安定した取引先があれば「売掛債権担保融資」が使える!

運転資金を安定的に確保するためには売掛金の管理・回収がとても重要です。しかし、取引先によっては回収期間が長く、自社の資金繰りがうまくいかなくなるケースもあります。そんなとき、第三者の保証や担保となる不動産、在庫・原材料などの動産がなくても、安定した業績を続けている取引先が売掛先の場合には、「売掛債権担保融資」を受けて当面の運転資金を確保することができます。

たとえば、東京スター・ビジネス・ファイナンスが提供している「スターABL(売掛債権担保融資)」のおもな利用条件をみると、次のようになっています。

申込資格 年商5億円以上の法人で継続的に業績の安定した売掛先を複数持っている企業(建設業、小売業を除く)
資金使途 運転資金(仕入・決算・納税・賞与の資金としてのご利用も可能)
借入金額 1,000万円以上2億円以内(担保評価額による)
担保
(企業が保有する売掛債権に「債権譲渡登記」による担保設定を行うが、売掛先への通知や承諾は不要で商業登記簿謄本には記載されない)
保証人 不要
原則代表者の個人保証は不要(ただし、審査の結果必要となることもあり)
借入期間 1年間(書き換え継続も可能)
金利(年率) 5.50%~14.60%(固定金利)
実質年率 5.50%~15.00%
手数料 借入金額の5%以内
中途解約手数料 最終弁済時残高の2.00%
返済方法 元利均等返済(原則貸付金額の3.0%相当額を毎月返済)
遅延損害金 年率19.60%
審査回答期間 最短14日
審査回答期間は、必要書類が到着してからの期間。

※筆者調べ(情報は2012年7月12日現在)

【参考リンク】

融資限度額は売掛債権の金額に掛け目を乗じて設定される

売掛債権担保融資では、借入企業が持つ売掛債権を金融機関に譲渡、金融機関は譲受した売掛債権を担保にして、その金額に掛け目を乗じた額の範囲で融資を行います。売掛先には倒産するリスクなどがあるため、実際の売掛金額そのままの金額で融資を受けられるわけではないことに注意が必要です。掛け目は、譲渡担保の保全方法、売掛先の信用度などにより、売掛債権ごとに異なります。

また、譲渡担保の保全方法には、(1)掛先への通知(2)売掛先の承諾(3)金融機関に売掛債権を譲渡したことの法務局への登記の3つがありますが、売掛先への通知や承諾を求める方法は「資金繰りが厳しいのか」という風評被害に遭い信用面でのマイナスが生じないとも限りません。その点、金融機関に売掛債権を譲渡したことを法務局に登記する方法は、法務局の債権譲渡登記事項概要ファイルには記録されますが、商業登記簿謄本には記録されず、問題なく金融機関に返済している限りは売掛先に伝わることがないために安心です。

なお、平成13年度より、中小企業(製造業では資本金3億円以下または常時使用する従業員数300人以下)が売掛先に対して保有している売掛債権を担保として金融機関が融資を行う場合に、信用保証協会が保証を行う制度が創設されています。この制度は基本的に業種に関わりなく利用できます。保証の申し込みはすでに取引のある金融機関を通して行うことになりますので、相談してみてはいかがでしょうか?

私が書きました

中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。FPオフィス・ワーク・ワークス 代表。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2012年07月12日