第407回
2011年の中小企業の資金調達の動向はどうなる?
- IT関連のベンチャー企業を4年前に立ち上げました。このご時勢で右肩上がりの業績とはいえませんが、なんとか経営を続けています。それでも、もう少し資金繰りがラクになると有難いというのが本音です。今年2011年の中小企業の資金調達はどうなるでしょうか?(会社役員Y.Mさん(43歳))
- 2010年6月の改正貸金業法の完全施行以降、大幅な縮小傾向にある個人向けの無担保ローンに比べ、事業向け貸付けの方は、このところ無担保ローンがやや伸びを見せています。とはいっても、景気の先行きはまだ不透明。景気対策のための「緊急保証制度」も今年2011年3月に打ち切りが決まっており、依然として中小企業の資金調達は厳しい状況が続きそうです。
2010年の企業倒産は5年ぶりに減少
帝国データバンクが発表した2010年の全国企業倒産集計によると、企業倒産件数は前年に比べると約12%減り、5年ぶりの減少となったそうです。
企業倒産が減った理由としては、公的支援制度である「緊急保証制度」や「金融円滑化法」などの金融支援に加え、「エコカー減税」や「エコポイント」などの経済対策の効果も相まって、多くの企業が資金繰りによる破綻を回避したことが考えられます。
ただ、企業倒産に占める破産の割合が過去最高の70%以上となっている点も見逃せません。(東京商工リサーチホームページ 『2010年「企業倒産における破産動向」調査』より)
企業の「倒産=破産」ではない
混同している人も多いかもしれませんが、「倒産」と「破産」は同じではありません。
一般的に企業経営が行き詰まったことを「倒産」といいますが、倒産状態にあっても、実際に廃業の手続き等をしなければ、本当の意味での倒産とはいえません。
それに対して、「破産」は法律に基づいた債務整理手続きの1つです。破産の場合、強制的に清算され、企業であれば最終的に法人格も消滅させられますので、多くの人が持っている倒産のイメージに近いといえるでしょう。
また、ほかの手続きに比べて圧倒的に件数も多いことから、倒産=破産と思っている人が多いのかもしれません。
ちなみに、倒産しても企業が存続しているケースの代表的なものが日本航空(JAL)です。日本航空(JAL)は、会社更生法の申請を行い、倒産しても再建、つまり企業経営を続けるという道を選んだわけです。
しかし、前述の破産件数の増加から分かるように、小規模または零細企業などの多くは、業績不振や過剰債務を抱え、破産など消滅型の会社倒産を選ばざるをえないというのが現状です。
最近の事業向け貸付けの状況は?
日本貸金業協会の発表によると、2010年12月末時点の消費者金融などの貸金業者が実施した無担保貸付(無担保ローン)の貸付残高が前年の同じ頃に比べて20%以上も減少。ピーク時は15兆円市場とも言われていた個人向けの無担保融資市場ですが、2010年末時点で7兆円程度となり、わずか1年ほどで3兆円近くも減少したことになります。
2010年6月の改正貸金業法の完全施行以降、借り手の総収入の1/3までしか融資できない「総量規制」の導入によって、将来的な利用に備えて借り控えが広がっており、貸付残高、貸付額共に、引き続き大幅な縮小傾向が続いています。
それに対して、事業向けの無担保貸付(無担保ローン)は若干ですが盛り返しを見せています。また、審査の厳格化が一層進んだため、一時、極端に減少してしまった保証付貸付もやや伸びています。
制度や法案の変化による資金調達環境の変化に気をつけよう
しかし、2008年10月から導入された「緊急保証制度」は2011年3月に廃止されることが決まっており、一定の零細企業を除いて、4月からは融資を行う金融機関等が20%のリスクをとる「責任共有制度」に移行されます。そのため、当然審査が厳しくなることが予想され、リスクの高い中小企業は従来のように借りられない可能性が高くなります。
また、2009年12月から導入された「金融円滑化法」については期限の1年間延長が決定されました。もちろん、借入金の元本返済猶予によって、資金繰りが改善した企業は少なくありませんが、この景気の先行き不透明な状況下で、猶予期間中に経営そのものが改善した企業がどれだけあるのか、経営不振の企業の倒産の先送りではないのか、といった懸念も残ります。
2011年はウサギ年ですが、「卯年は跳躍の年」とよく言われます。
過去を振り返っても株価が上昇したり、景気が上向いたりしている年も多く、企業倒産の少ない年とも言われています。
円高の影響もあり、景気は先行き不透明感が強く、中小企業を取巻く環境は依然として厳しい中、今年1年どのような年になるのかを注意深く見極めていく必要がありそうです。