第283回
景気低迷の今、働きやすい環境を考える
- 小さな会社を経営しています。景気はますます悪くなっていくようで、経営状態も厳しく、がんばってくれている社員の給料を上げるのも難しい状況です。なんらかの形で社員の努力に報いて長く勤めて欲しいと思っているのですが、打つ手はないでしょうか。
- 社員が働きやすい環境を整えることは、会社の将来に対する投資にもなりえます。公的機関や自治体の支援(助成金・補助金など)情報にもアンテナを伸ばし、活用するとよいでしょう。
景気後退期、社員に賃金アップで報いることは難しいが・・・
内閣府が9月12日に発表した2008年4-6月のGDP(国内総生産)改定値は、物価変動の影響を除いた実質GDPで前期比0.7%減、年率換算では3%減のマイナス成長となりました。「景気のものさし」として用いられる実質GDPが減少しており、景気後退がいっそう鮮明になってきました。
世界的な景気減速や原油などの値上がりで企業の収益は圧迫され、賃金が伸び悩む上に物価高で個人消費も伸びないという重苦しい状況が続いています。
このように二重、三重に経済の不安要因が重なり、努力を重ねても会社の業績を上向かせるのが難しい状況で、社員の努力に賃金アップで報いるのは難しいですよね。かといって、いくら努力しても何にも報われることがなければ、社員のやる気も低下し、会社の業績にも響いてきます。景気の悪い今こそ、「人」に力を入れたい時期といえますね。
GDP(国内総生産)は、国内で一定期間に生産された財・サービスの総額から中間生産物(最終生産物を生産するために使用された、原材料や半製品、燃料などの生産高)を除いたもの。物価変動の影響を差し引いたあとの値が「実質GDP」であり、物価変動の影響を差し引く前の値が「名目GDP」である。
実質GDPの伸び率を経済成長率と呼び、「景気のものさし」として用いられる。
働きやすい環境、能力を発揮しやすい環境をつくる
社員のやる気に報酬の多寡は大きな影響があると思われますが、一方で、いくら報酬が高くても、やりがいのない仕事、働きにくい職場(労働時間、労働場所、人間関係、職場のシステム、福利厚生等)では働けない、働きたくないという場合もあります。あなたの会社が社員にとって働きやすい環境なのか見直し、より能力を発揮しやすい環境をつくることが、社員のやる気アップにつながるかもしれません。
最近よく言われる「ワークライフバランス」は「仕事と生活の調和」を意味します。平成19年12月18日に定められた「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、目指すべき社会の姿として、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」を掲げています。育児休暇制度や介護休暇制度、時短勤務や在宅勤務など会社の制度を見直したり、業務内容や組織の見直しで業務の効率化を図って残業を減らしたりすることは、個々の社員の「ワークライフバランス」を実現して「働きやすい環境」をつくることになり、社員のやる気を引き出すことにもつながるでしょう。
研修制度を充実させる、キャリアアップを図れる制度を設ける、人事異動に社員自身の希望を反映させるなど、社員のやりがいややる気を引き出す仕組みは、そのほかにも沢山考えられますね。
公的支援も活用して、無理のない環境づくりを
しかし、「働きやすい環境」を整えるにもお金がかかり、専門家の意見が聞きたいこともあるでしょう。各自治体や公的機関の実施している企業支援で利用できるものがあれば、大いに活用したいものです。企業支援の内容には、事業内容に直結するような研究開発費の助成や公募もあれば、社内のしくみの見直しに利用できるような、ITや経営の専門家の派遣などもあります。ただし、公募や助成は、対象(地域・事業内容など)や期間を区切って募集されるので、あなたの会社が応募したり利用したりできる募集情報を随時チェックしておくことが必要です。
「資金調達ガイド」の「支援情報ヘッドライン」には最新情報が随時掲載されるので、時々チェックしておかれるとよいでしょう。
また、あらためて言うまでもありませんが、働きやすい環境は、働ける職場があってこそ。急な資金需要に対応できるビジネスローンなどの融資先を複数リストアップしておくなどの資金繰り対策も考えておきましょう。