第263回
国民生活金融公庫の株式会社化でどう変わる?
- 飲食店を経営している個人事業主です。先日、国民生活金融公庫が株式会社化されるという話を聞いたのですが、本当でしょうか?現在、国民生活金融公庫からお金を借りているのですが、何か影響等はありますか?(自営業Y.M.さん(42歳))
- 平成20年10月、国民生活金融公庫は、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行(国際金融等業務)、沖縄振興開発金融公庫(※平成24年度以降に統合)と統合され、「株式会社日本政策金融公庫」として新たに発足することが決定しています。
「株式会社日本政策金融公庫」の発足
今回の改正は、平成17年以降、進められている行政改革の一環といえるもので、「肥大化した政府系金融機関を縮小し、
民間に任せられる部分は民間に」がその大きな目的となっています。
平成19年5月に「株式会社日本政策金融公庫法」が成立し、現在ある8つの政策金融機関のうち2機関は完全民営化、
1機関は廃止し、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行(国際金融等業務)、
沖縄振興開発金融公庫の5つの機関は、それぞれ業務を縮小した上で、新しい政策金融機関に統合されることになりました。
新公庫は、平成20年10月、「株式会社日本政策金融公庫」として新しく発足(沖縄振興開発金融公庫は平成24年度以降に統合)し、 融資残高約2兆7億円という大手銀行並みの巨大金融機関へと生まれ変わります。
株式会社への移行の影響は?
これら統合される公庫のうちで、とりわけ個人事業主や中小企業等に関係が深いのが「国民生活金融公庫」と「中小企業金融公庫」ではないでしょうか?
両者とも、銀行等の民間金融機関から融資を受けることが難しい個人事業主や中小企業等を対象に融資を行う政府系金融機関ですが、
どちらかといえば、国民生活公庫が比較的小規模の事業者を対象としているのに対し、中小企業金融公庫は、
それよりも比較的規模の大きい中小企業や多額な借入金を必要としている中小企業などを対象に融資を行っています。
新公庫は、株式会社化されますが、それは、株式会社のガバナンス(「統治」のこと。日本では、「コーポレートガバナンス(企業統治)」の意味でよく使われる)
のしくみを利用して透明性の高い効率的な事業運営のためであり、株式は常時政府が保有すると定められているので、
引き続き公共性の高い政府の金融機関の役割を担うという機能に変わりはありません。
したがって、ご相談者(自営業のY.M.さん)のように現在、事業資金融資を受けている人は、そのまま新公庫へ承継されるため、とくに影響はなく、
今後、採算性の低い小企業は融資が受けられなくなるということはなさそうです。
さまざまな融資先を選択肢に入れておこう
しかし、国の施策や方針は、今後どのように変わるか分かりません。
社会全体の流れとして、政府系金融機関は縮小傾向にあり、民営化後のさまざまな機関の事業内容の将来像が明確に定まっていない点も問題視されています。
そんな政府の施策に振り回されて、慌てることのないように、事業資金は、公的資金と 民間資金の特徴やメリット・デメリットを把握し、ニーズに合わせて賢く使い分けることが、これからも重要になってくるといえるでしょう。