第609回
公的年金の支給額が初の実質減額へ!将来の家計はどう作ればいい?
- 先日、公的年金の支給額が減額されるというニュースを目にしました。子どもの教育費の目途もついてきたので、今後は自分自身の老後について考えなければならないと思っています。しかし、どれくらい準備したら良いのか見当もつきません。老後資金の準備はどのようにしたら良いのでしょうか?(Kさん 45歳 会社員)
- 「老後資金として3,000万円は必要」などの情報に振り回され、老後を不安に感じている人が多いようです。しかし、生活費は人それぞれ違うため、必要な老後資金も異なります。まずは、自分自身に必要な老後資金がいくらなのかを知ることから始めましょう。
老後の家計はどうなっている?
何事もそうですが、正体がわからないことには不安を感じるものです。そこで、正体を探るために、統計データを参考に老後の家計を見てみましょう。
老後の収入の核となる公的年金は、原則65歳から支給になりますので、以下に世帯主が65歳以上の世帯の1カ月の収入と支出をまとめてみました(%は収入に対する支出の割合)。データを見ると、公的年金だけで支出をまかなうのは難しいことがわかります。そのため、老後資金として貯蓄等が必要になってくるのです。
しかし、生活の仕方は人それぞれですから、必要な支出も異なります。また、働き方によって公的年金も異なります。そこで、統計データはひとつの目安とし、自分自身の家計を把握することも大切でしょう。公的年金は、毎年郵送されてくる「ねんきん定期便」や日本年金機構の「ねんきんネット」などで試算することができます。支出は現在の家計を元に、老後になったら必要な項目、不要な項目を加味して試算してみると良いでしょう。
二人以上の世帯 | 単身世帯 | |||
---|---|---|---|---|
社会保障給付 |
190,813円 |
- |
118,381円 |
- |
その他収入 |
26,598円 |
- |
6,564円 |
- |
<1.収入合計> |
217,412円 |
- |
127,035円 |
- |
食料 |
63,637円 |
29% |
32,876円 |
26% |
住居 |
17,131円 |
8% |
14,708円 |
12% |
光熱・水道 |
22,389円 |
10% |
13,181円 |
10% |
家具・家事用品 |
9,852円 |
5% |
5,660円 |
4% |
被服及び履物 |
7,535円 |
3% |
4,637円 |
4% |
保健医療 |
14,947円 |
7% |
8,526円 |
7% |
交通・通信 |
26,502円 |
12% |
11,375円 |
9% |
教育 |
553円 |
0% |
9円 |
0% |
教養娯楽 |
25,522円 |
12% |
15,334円 |
12% |
その他の消費支出 |
58,016円 |
27% |
36,926円 |
29% |
税金・社会保険 |
30,314円 |
14% |
12,068円 |
9% |
<2.支出合計> |
276,399円 |
127% |
155,300円 |
122% |
<3.収支残(1-2)> |
-58,986円 |
-27% |
-28,265円 |
-22% |
※その他の消費支出:理美容や交際費、仕送り金のこと。
<総務省「家計調査 家計収支編(2013年)」(世帯主が65歳以上の場合)より筆者作成>
老後資金はいくら必要?
では、老後資金はいくら準備しなければならいのでしょうか? 前項の統計データを参考に試算してみましょう。<3.収支残>が月々に不足する金額です。二人以上の世帯であれば、月58,986円、年間で約71万円の不足。単身世帯であれば、月28,265円、年間で約34万円不足しています。
次に必要な期間を考えますが、参考になるのが平均余命です。厚生労働省「平成25年簡易生命表」によると、65歳時点の平均余命は男性が19.08年、女性は23.97年です。
このように金額と年数から老後資金を試算しますが、ポイントは多めに見積もっておくことです。公的年金は減少傾向にあり、何歳まで生きられるのかはわからないため、少なく見積もって高齢になってからお金が不足することのないように準備したいものです。
例えば、単身世帯で試算してみましょう。年間34万円の不足が女性の平均余命である24年間で試算すると816万円です。二人以上の世帯も同様に試算してみると、年間71万円を24年間だと1,740万円です。あくまでもひとつの目安ですが、65歳時点までにこれだけの貯蓄を準備していくことになります。
ちなみに、60歳で定年退職をした後、公的年金を満額受給できる65歳までの間、収入が途絶えると必要な金額が多くなってしまいます。例えば、1カ月の支出が25万円かかる場合、年間で300万円、5年間で1,500万円になります。再就職をするなどしない限り、貯蓄を取り崩して生活しなければならないので、その分の貯蓄も必要になってきます。しかし、月に15万円、年間で180万円の収入を得ることができれば、年間で不足する金額は120万円、5年間で600万円です。老後資金として準備する金額が大きく違ってくることになりますね。
このように老後に必要なお金は、どのような生活を送りたいのかによって変わります。そのため、お金のことだけにとらわれず、まずはどのように暮らしたのかを考えることからスタートしましょう。
老後資金をどのように準備していくか
必要な老後資金がわかれば、後はどのように準備していくのかを考えることになります。質問者のKさんは45歳ですから、65歳から老後だとすると、20年間準備する期間があります。
仮に2,000万円を20年間で準備するためには、どのようにしたらいいでしょうか? 会社員であれば、定年退職のときには退職金が支給されます。仮に退職金が800万円あれば、残りは1,200万円。これを20年間で準備するためには、年間60万円、月に5万円を確保できれば準備できます。または、金利1%の金融商品で運用できれば、月46,300円確保できれば準備できます。もちろん、金利が高ければ高いほど、月々に確保しなければならない金額は少なくて済みます。
40代や50代では、子どもの教育資金や住宅ローンの返済など、まだまだ老後の準備は難しいという人も多いかもしれません。しかし、誰にでも老後は訪れますので、少額からでも良いので老後資金の準備を始めていくようにしましょう。5,000円でも1万円でも「老後のために」と意識して、先取りで貯蓄していくことが大切です。保険や住宅ローンといった固定費の見直しをすることで、そのお金を捻出できる可能性もあります。準備できないとあきらめずに、できることを探していきましょう。