第1082回
2024年6月から開始!「定額減税」について解説!
- 会社員で扶養家族は妻、子ども2人で合計3人です。定額減税は助かりますが、住宅ローン控除の額は減ってしまうのでしょうか? 減税の枠が残った場合は、どうなるのかも教えてください。(東京都・Sさん)
- 住宅ローン控除やふるさと納税の限度額には影響ありません。いずれも定額減税前の所得税額で計算されるためです。また、減税分が残った場合は、調整給付として支給されることになっています。
6月からスタートし、控除額がなくなるまで差し引かれる
6月に入り、「定額減税」がスタートしました。1人当たり所得税3万円と住民税1万円の合計4万円が減税されることになります。減税対象となるのは、2024年分の所得税の納税者であり、日本国内に居住していること、合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は給与収入が原則2,000万円以下)であることが条件となります。納税者と生計を一にする配偶者、扶養親族も対象となり、その人数によって控除額が決まります。ご相談者の場合は、4人分の16万円が減税になります。
給与所得者の場合、所得税は6月から減税がスタートし、賞与支給日が給与支給日より早ければ、まず賞与から減税され、控除しきれなかった場合、6月の給与、7月の給与から差し引かれ、減税額がなくなるまで控除が続きます。ただし、1年限りの措置のため、満額を控除できなかった場合は、差額を「調整給付」として、1万円単位(端数切り上げ)で自治体から支給されることになっています。
住民税については、6月は納税がなく、年間の住民税額から減税額を差し引き、7月以降の11カ月で按分した額が毎月徴収されます。
フリーランス、自営業者も定額減税の対象で、2024年分の確定申告の際に、控除を受ける形になります。
また、定額減税を受けられない非課税世帯や低所得世帯に対しては、7万~10万円の給付があり、子育て世帯には18歳以下の子ども1人当たり5万円が上乗せされることになっています。
定額減税を控除しきれば、元の所得税に戻るため、家計管理には注意が必要
具体的な計算例を見てみましょう(国税庁HPより)。4人家族で定額減税が12万円(所得税分)で、給与からの源泉徴収税額が毎月1万1,750円、賞与からの源泉徴収税額が9万3,000円のケースです。
6月給与では、1万1,750円全額が控除され、源泉徴収税額は0円。
6月賞与でも9万3,000円全額が控除され、源泉徴収税額は0円。
7月の給与も同様に全額控除されます。この時点で定額減税の残りは3,500円。
8月の給与から3,500円が控除され、源泉徴収税額は8,250円となります。
これで12万円の定額控除が終了となり、9月の給与からは1万1,750円が源泉徴収されることになります。
減税は喜ばしいことですが、あくまでも一時的な措置であるため、毎月の支出の変動が大きくならないように家計管理には注意しましょう。そもそも定額減税は、物価高騰による家計への影響を考慮した今年度限りの税制です。物価上昇は今後も続くと思われ、家計負担は厳しい状況になります。支出を見直し、定額減税分を有効に使うようにしたいものです。
住宅ローン控除やふるさと納税は、定額控除適用前の所得税がベースになる
定額減税が実施されることで、住宅ローン控除額が少なくなることを心配されている人が少なくありません。結論から言えば、住宅ローン控除額に影響はありません。
住宅ローン控除は年間の所得税から、「年末の住宅ローン借入残高×控除率」で計算された金額が控除されるものです。定額減税は、住宅ローン控除を受けたあとの所得税から差し引かれますので、定額減税による影響は受けません。
たとえば、ご相談者の年間所得税額が30万円だとし、2023年末時点の住宅ローン借入残高が3,000万円あるとした場合、住宅ローン控除額は3,000万円×0.7%で21万円です。年間所得税額30万円から21万円を差し引くと9万円になり、これが定額減税適用前の所得税となります。
定額減税が合計12万円(所得税分)ですから、3万円が控除しきれません。この分は「調整給付」として自治体から支給されるということです。
ふるさと納税の限度額についても同様に、定額減税適用前の所得税がベースとなって算出されますので、利用するにあたって限度額が引き下げられるということもありません。
定額減税に関しては、給与明細に所得税の減税額を明記することが企業に対して義務づけられました。必ず給与明細で確認するようにしましょう。調整給付の対象となる人は、必要な手続きなどを自治体の広報などで確認するようにしましょう。