第1051回

中古車の「支払総額」義務化でどうなった?注意点もチェック!

近いうちに、マイカーを買い替えようと思っています。これまでも中古車を購入してきたため、今回も中古車をと考えていますが、2023年10月から中古車の販売価格の支払総額表示が義務化されたと聞きました。これはどういうことですか。また、購入する時の注意点があれば教えてください。(長野県 男性 35歳)
中古車業界で常態化していた不当な価格表示や、横行していた不適切な販売方法等を改め、消費者保護や取引の透明性を高めることを目的に、2023年10月1日以降、中古車の販売価格の「支払総額」表示が義務化されました。これにより、表示する価格の内容がルール化されたため、購入者は、従来より安心して中古車を購入できるようになると期待されます。また、中古車価格の比較もしやすくなるでしょう。ただし、支払総額に含まれない費用もあるため、事前にしっかりチェックをする必要があります。

2023年10月以降、中古車の販売価格の「支払総額」表示が義務化された背景は?

これまで中古車業界では、安価な価格を表示しながら、実際には表示した価格では購入できない「不当な価格表示」が常態化していました。また、安い価格で集客した後、商談時に保証や整備等の購入を強制する不適切な販売方法が横行していたり、本来車両価格に含まれるべき納車準備費用等の費用を諸費用として請求する不適切な請求が行われたりなど、多くの問題点が指摘されていました。

こうした問題点等への対応を目的に作成された「中古車の販売価格(「支払総額」)の表示に関する自動車公正競争規約・同施行規則の改正案」が消費者庁及び公正取引委員会で承認され、2023年10月1日から、中古車の販売価格の「支払総額」表示が義務化されることが決まりました。今後、表示ルールを違反した事業者は、厳重警告、違約金、事業者名の公表、実態調査、監視、改善指導などのペナルティを受けることになります。

「支払総額」表示ルールが明確化されたことにより、購入者は、これまでより安心して中古車をできるようになります。また、中古車価格を比較しやくなることも期待されます。

「支払総額」、及び、内訳として「車両価格」+「諸費用」の表示が必要!

「支払総額」を端的に表現すると、「その自動車を購入する際に当然に発生する費用」です。したがって、購入者が選択できるオプションなどの費用は含みません。

「車両価格」は、店頭において車両を引き渡す場合の消費税を含めた現金価格で、展示時点で装着済の装備等(ナビ、オーディオ、カスタムパーツ等)も含まれます。その他、販売店が中古車を販売するにあたって納車前に当然行うべき「納車準備費用」「車内清掃」「洗車」「クリーニング」「ワックスがけ」等、また、納車前に最低限必要な「納車点検費用」「納車整備費用」「オイル、バッテリー交換費用」等、販売店が必ず付帯して販売する場合の「保証費用」「定期点検整備費用」等、及び「土日納車費用」「利益」「販売手数料」「オークション陸送費」「広告掲載料」等、「リサイクル預託金相当額(「諸費用」に含めない場合)」も「車両価格」に含まれます。

上記の費用を「車両価格」ではなく、「諸費用」として別途請求した場合、不当な価格表示として、重大な規約違反になります。

「諸費用」には、「自賠責保険料」、税金等(「自動車重量税」「自動車税種別割」「自動車税環境性能割/軽自動車税環境性能割」「法定費用(車庫証明/検査登録)」「リサイクル預託金相当額(「車両価格」に含めない場合)」等)、購入者の依頼に基づいて販売店が代行する場合の登録等手続代行費用(「検査登録手続代行費用」「車庫証明手続代行費用」)があります。

なお、一般的には諸費用に分類されるものであっても、購入者によって要否が異なるものは、「支払総額」に表示すべき「諸費用」には含まれません。具体的には、「任意保険料」「希望ナンバー申請費用」「リサイクル費用(未預託または追加が必要な装備がある場合)」「下取車諸手続代行費用」「下取車査定料」「管轄外登録(届出)費用」「購入者が指定する場所までの納車費用」などがあります。

購入前に表示ルールを確認しておくことが大切!

2023年10月以降、販売価格の「支払総額」表示の義務化に伴い、違反した事業者にはペナルティが課されることから、消費者保護や取引の透明性がこれまでよりも格段に高まることが想定されます。

中古車の購入者も、購入する際には、あらかじめ表示ルールを学習し、「車両価格」と「諸費用」のそれぞれにどのような費用が含まれるのかを把握しておくことが必要です。支払総額を事前に把握できることで、予算に合う車種の選定やマイカーローンの返済計画など、マイカー購入のプランも立てやすくなります。また、中古車販売店が独自に金額を設定している費用(たとえば、保証や点検整備費用等)の妥当性などをしっかり比較、検討することが、中古車の"上手な買い方"に繋がります。

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中村 宏 (なかむら ひろし)

ファイナンシャル・プランナー。株式会社 ワーク・ワークス代表取締役。

教育出版社勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。「お客様のお金の不安を解消する」をモットーに、1,500件を超える個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿等を中心に活動。無料メルマガ「生活マネー ミニ講座」を配信中。著作 「自分のお金の育て方」(祥伝社)、「老後に破産する人、しない人」(KADOKAWA中経出版)。

※執筆日:2023年10月27日